2023年12月15日
筑波大、物質科学の定理に反する?ホール効果発見
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 筑波大学、東北大学の研究グループは14日、電流を流す方向によって電流の曲がる方向が変わる新しいホール効果を観測したと発表した。物質科学の基礎定理の一つであるオンサーガーの相反定理によれば、このような現象は起こりえないはずだが、特殊な磁気配列を仮定することで、相反定理と矛盾せずにこの現象を説明できる物理モデルを提案した。

 磁場中にある導体や磁石に電流を流すと、電流と磁場に対して垂直方向に電圧が生じる「ホール効果」や「異常ホール効果」という現象が起きる。物質科学における基礎定理の一つである「オンサーガーの相反定理」によると、磁場や磁化に垂直な面内であれば、どの方向に電流を流しても電子が曲がる方向は変わらないということが導かれる。この定理に反するような現象は、これまで見つかっていなかったが、今回、低温で円錐型の磁気異方性を有するスピネル酸化物NiCo2O4薄膜において、電流方向に依存した異方的な異常ホール効果を初めて観測した。

 この現象を説明するために、実験的に観測された異方的な異常ホール効果の対称性を、現象論的な観点から考察したところ、クラスター磁気トロイダル四極子と呼ばれる磁気構造が関与していることが示唆された。そこで、円錐型の磁気異方性により磁気トロイダル四極子構造と強磁性が共存した時には、オンサーガーの相反定理と矛盾せずに異方的な異常ホール効果を説明できる物理モデルを提案した。

(詳細)
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20231214_03web_hall.pdf