2023年12月27日
北大、口腔内細菌血栓症、がんの転移促進
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 歯学研究院の樋田京子教授らの研究グループは26日、う蝕の原因細菌によって、遠隔臓器の血管炎症と血栓症が誘導され、がんの転移が増加することを解明したと発表した。

 口腔内細菌であるStreptococcus mutans(ミュータンス菌)は、歯周炎などがあると血液循環に侵入して様々な臓器に影響を及ぼす。一方、血管炎症は血栓形成促進に働く。血栓症はがん患者の合併症としても知られており、死亡原因はがんに次いで2番目に多いことが報告されている。

 研究グループは、これまでミュータンス菌が血管の炎症を誘発し、がん転移を促進させると報告してきたが、今回ミュータンス菌による肺血管炎症と血小板の活性化、好中球の活性化により血栓形成が促進され、がん細胞の血管への接着を増やすことを明示した。
 
 マウスを用いたがん転移モデルにおいて、ミュータンス菌が血中に循環している状態では、肺の血栓増加を介して血中循環がん細胞の肺転移が増加することが示された。
 本研究により、がん患者の口腔衛生状態を良好に保つことが、がん関連血栓症やがん転移抑制に重要であることが示唆された。同研究成果は12月14日公開の「 Cancer Science 」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆う蝕とは :口の中にいる細菌が、食事や飲み物に含まれる糖分を栄養分にして作りだした酸によって、歯が溶けた状態。ついには歯に穴があくといわゆる「むし歯」となる。

(詳細)
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/231226_pr.pdf