2024年01月05日
三菱商事・中西社長「変化の年、2つのリスク」
【カテゴリー】:経営
【関連企業・団体】:三菱商事

 三菱商事の中西勝也社長は4日、要旨次の通り2024年の年頭所感を述べた。

■2024年の年頭にあたり、新年のご挨拶を申し上げます。
まず、元日に発生しました能登半島地震により亡くなられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被災された多くの皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
 2024年という年は、将来振り返った時に、歴史上大きな転換点になった、と言われるような「変化の年」になるのではないかと感じています。その理由を2つお話しします。

■1つ目は地政学リスクによる転換です。米中対立をはじめ、ウクライナや中東での紛争など、世界のあらゆる地域で騒乱が継続し、それに対応する各国の足並みの乱れが、過去数十年続いてきたグローバリゼーションの潮流に大きな影響を与えることが、最早、常態化していると見るべきです。

 特に、今年は、70以上の国々で選挙が行われ、世界の民主主義の有り方にスポットライトが当たる年となります。これらの国々に住んでいる人口は合計で約40億人、世界の人口が約80億人ですから、実に半数にあたる地域で選挙が行われる予定です。1月の台湾での選挙を皮切りに、インドネシア、インド、 そして11月のアメリカ大統領選挙と続きます。各国・地域でますます内向き志向、自国主義が強まるのではないでしょうか。
 その結果、全世界が協調すべき地球課題でもある脱炭素への取り組みについても、国・地域によって違いが出てくるでしょう。また主要国による「産業誘致合戦」などの様相もあり、本来の目的達成に向けた道筋にも不透明感が増すことになりそうです。また、国際社会で存在感を増すグローバルサウスなど新興国の立ち位置も様々で、世界の地政学バランスに大きな変化が生まれ、更なる多極化・分断化という色彩が強まる年になるのではないかと思います。

■2つ目は政治・経済や地政学リスク以上に、世界秩序そのものに大きな地殻変動をもたらしうる技術の更なる進化-すなわち生成AIの進化による転換です。現在、地球上のあらゆる優秀な頭脳が競うようにAIの開発に従事しています。AI開発を巡っては、国際協議による規制も議論されていますが、進化のスピードは止められず、またAIを軸とした対立の勃発などの可能性も否定できません。AIの進化は、単に、我々の日常生活を便利に、ビジネスを効率的にする、ということに留まらず、国家の政治・経済体制や人々の思想・価値観に至るまで、あらゆるレイヤーに大きな影響をもたらし、AIを制するものが次の未来の覇権を握ると言っても過言ではありません。

 只今申し上げた事業環境に於けるこれら2つの要因-「地政学の益々の不確実性」と「技術進化による覇権争い」が、これからの未来に向けた転換点・ターニングポイントになっていくのではないかと思います。

 一方、日本が置かれた現状はどうでしょうか。原子力の再稼働がなかなか進まず、輸入に大宗を依存せざるを得ないエネルギー分野や、米国GAFAMを中心としたデジタルプラットフォーマーに市場を独占されつつあるデジタル・データ関連分野において増加している国際収支赤字など、日本の国際産業競争力・プレゼンスの低下が現実のものとなりつつあります。加えて、これまで自動車をはじめ、日本企業のプレゼンスが高かったアセアン市場でも、中国をはじめとする海外企業の進出が加速し、日本に利益をもたらしてきた産業基盤そのものがかつてない脅威にさらされています。

 そうした中で政府主導により、サプライチェーンの再構築、新技術開発・スタートアップ企業支援など国内での新産業創出・産業誘致の動きが強まっています。まさに日本の技術力、それに伴う産業競争力を復活させ、日本のプレゼンスを取り戻すことができるか、ここ数年が正念場だと認識しています。

 当社としても、日本企業として、官民一体となっての日本復活に対しては引き続き取り組んで行きたいと思います。一方で、マクロ・ミクロ的な地政学・世界の動き・変化、デカップリングやパワーバランスの変遷、更にはAIが人類にもたらす影響や変化等を不断に、そして俯瞰的に捉え、柔軟性とスピード感をもって会社の方向性を判断していくことが社長の責務であるとの認識を強くしています。

 今まで述べてきました、刻々と変化する事業環境を踏まえて、皆さんには是非この環境や難局に怯むことなく、積極的に挑戦してほしい、と同時に思っています。即ち、「変化はチャンスだ」ということです。(中略)

 さて、改めてコンプライアンスの重要性について触れておきたいと思います。
昨年も年頭挨拶で、Back to Basics、基本に立ち返ろう、と皆さんにお伝えしました。三菱商事の企業理念である「三綱領」、なかんずく「処事光明」の精神は、例えどんなに社会や環境が変わり、事業の形が変わろうとも、ずっと堅持すべきものです。役職員一同、コンプライアンスの重要性を再認識し、今一度、胸に刻んでいきましょう。

 最後になりますが、本年の干支は「甲辰(きのえ・たつ)」です。これには「新しいことを始めて、成功する。いままで準備してきたことが形になる」といった意味があると言われています。まさに新たな体制でスタートを切るにふさわしい年と思います。今年も皆さんと共に、健康で充実した1年を過ごせることを祈念して、年頭の挨拶にします。