2024年01月29日
九大、概日時計と神経性疼痛制御 仕組み解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学薬学部の大戸茂弘教授らの研究グループは29日、概日時計の変調が、神経損傷によって生じる慢性的な痛み(神経障害性疼痛)を緩和する仕組みを明らかにしたと発表した。

 多くの生物は、地球の自転に伴う外部環境の周期的な変化に対応するため、自律的にリズムを発振する機能(概日時計)を備えている。概日時計の機能は「時計遺伝子」によって制御され、睡眠・覚醒のサイクルやホルモン分泌など24時間周期のリズムが生じる。このような仕組みは病気の発症や症状にも時刻による変動を引き起こす。一方、神経障害性疼痛は末梢神経のダメージで発症する慢性的な痛みで、軽い触刺激でも激しい痛みを引き起こす「アロディニア」を特徴としている。
 
 大戸教授らの研究グループは、概日時計によって神経障害性疼痛の症状が時刻によって変動することを見出していたが、時計遺伝子の機能とアロディニアとの関連性は明らかになっていなかった。

 今回、研究グループは概日時計の働きが慢性的に変調したマウスでは、末梢神経がダメージを受けても神経障害性疼痛が発症しないことを見出した。時計遺伝子の機能不全マウスの脊髄では、アドレナリン受容体を介して、エンドカンナビノイドと呼ばれる物質の産生が上昇していることがわかった。つまり、概日時計の変調によって産生が増加したエンドカンナビノイドが、末梢神経の損傷によるアロディニアの発症を抑制していることを突き止めた。今後の新しい治療標的発見や新薬創製などにつながると期待される。同研究の成果は1月17日、国際科学雑誌「PNAS Nexus」オンライン版に掲載された。

◆概日時計 :睡眠サイクルやホルモン分泌など様々な生体機能に約24時間周期の変動(概日リズム)を引き起こす仕組み。疾患の発症や症状、薬の効果にも時刻による変動を引き起こすことが知られている。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1034