2024年05月21日
九大、エルニーニョ現象発達の仕組み解明
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 エルニーニョ現象は地球規模の大気の流れを変え、世界中で異常気象を引き起こす。日本ではエルニーニョ発生年は暖冬になりやすいことが知られているが、寒冬になった事例もあり、どのような仕組みがエルニーニョ発生年を決定づけているのかは未解明だった。

 九州大学応用力学研究所の時長宏樹教授らの研究グループは、過去61年間の天候を100通り再現した大規模な数値シミュレーションデータを解析し、夏から冬にかけてのエルニーニョ現象の発達の仕組みを解明したと発表した。

 夏の早い時期から強いエルニーニョ現象が発達すると、熱帯インド洋の海面水温が大きく上昇する。それらの相乗効果によって、フィリピン東方沖の降水活動が抑制される。この降水活動の抑制は日本の南東沖で高気圧を形成し、偏西風を大きく北側へ蛇行させる。これによって、日本を含む東アジア域への寒気の吹き出しが弱くなり、暖冬が起こりやすくなる。逆に、エルニーニョ現象が発生しても、その発達の進行が遅いと熱帯インド洋の水温上昇は大きくならない。フィリピン東方沖における降水活動もわずかにしか抑制されないため、日本の南東沖の高気圧は形成されない。
 
 一方、北太平洋上の低気圧が日本付近にまで張り出すことによって、西高東低の冬型の気圧配置と寒気の吹き出しが強化され、むしろ寒冬傾向になりやすくなる。これらの発見は、今後、3カ月予報などの季節予測の精度向上に貢献すると期待される。
 同研究成果は、米国気象学会の国際科学誌「Journal of Climate」オンライン版で4月26日に公開された。
 
<用語の解説>
◆エルニーニョ現象 :赤道東部太平洋域における海面水温の顕著な昇温現象のこと。貿易風とよばれる東から西へ吹く風が弱まることによって発生し、終息するまで1~2年ほど持続する。エルニーニョ現象が発生している時には、豪雨による洪水や干ばつ、高温や低温などの異常気象が生じやすい。

(詳細)
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/57281/24_0516_01.pdf