2024年06月07日
東北大など、安定して存在する量子細線発見
【カテゴリー】:行政/団体
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 金属、絶縁体、半導体に次ぐ固体の新しい状態であるトポロジカル絶縁体は、次世代の超低消費電力デバイスへの応用が期待されているが、安定して存在する理想的な物質は見つかっておらず、計測結果をもとにした性質の理解なども進まなかった。
 
 東北大学、大阪大学、京都産業大学、高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構の共同研究グループは6日、ガスクラスターイオンビーム(GCIB)と高輝度放射光を用いた実験と理論計算により、テルルの量子細線が1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした。
 
 黒鉛を薄くしてグラフェンにすると性質が変化するように、トポロジカル絶縁体も薄くすると性質が劇的に変わることが予想されている。研究グループは今回、テルル(Te)からなる原子レベルで細い線(量子細線)が、1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした。

 この成果は、バルク結晶(3次元)や薄膜(2次元)形状をした既存のトポロジカル絶縁体とは異なる性質が期待される1次元トポロジカル絶縁体の基礎研究の進展だけでなく、量子ビット(量子コンピュータ)や高効率太陽電池などの実現に道を拓くものとなる。今後、量子ビットや高効率太陽電池などの応用につながると期待される。
本研究成果は2024年6月6日、科学誌「Nature」に掲載された。
 
<用語の解説>
◆ グラフェン:
 炭素が蜂の巣のような六角形の網の目状につながったシート状の物質。黒鉛(グラファイト)を、非常に薄く剥がすなどして得ることができる。グラフェン内の電子は、ディラック電子と呼ばれる特殊な電子状態(エネルギーと運動量の関係)を持つ。
◆トポロジカル絶縁体:
 位相幾何(トポロジー)の概念を物質の電子状態の解析に取り入れることで、これまでの絶縁体とは一線を画す、内側は絶縁体で表面だけ金属的な性質を示す新しい絶縁体物質として2005年に提唱された。
 
ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press0606_01web_topological.pdf