2024年06月14日
北大、フロー法でカチオンとアニオン 超高速反応
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 北海道大学大学院 理学研究院の永木愛一郎教授らの研究グループは14日、フローマイクロリアクター内で別々かつ瞬時に発生させたカチオンとアニオンを活用し、0.07秒の超高速な反応に成功したと発表した。

 有機合成化学では化学反応によって医薬品や機能性材料を創出し、社会に提供している。化学反応の速さは様々で、遅いものでは数日以上の時間を要するものもあるが、近年では、速やかに進行する化学反応が求められている。

 カチオンやアニオンといった化学種は反応性が高く、それぞれ高速な化学反応に利用できるが、カチオンとアニオンを同時に利用する超高速な化学反応は実現していなかった。これはカチオンやアニオンが不安定で分解しやすいことに加え、安定性や寿命の異なる複数の高反応性化学種を同時に取り扱うことができなかったためだ。

 研究グループは、流通型の反応装置であるフローマイクロリアクターを活用し、カチオンとアニオンを分割された空間内で発生させ、それらの分解前に反応させる収束的な手法により、カチオンとアニオンの直接反応に成功した。
 
 この方法では、超強酸を用いることで、極めて反応性が高く短寿命のカチオン種を0.02秒、つまり刹那の時間に発生させることができ、アニオンと反応させることで、0.7~6.0秒と極めて短時間での化学合成が可能となった。

 この反応を応用することで医薬品などの高付加価値化合物の効率的な合成法の開発が可能になると考えられる。また、反応をさらに改良することで、環境に親和性のある超高速な有機合成プロセスの開発が期待できる。
 同研究成果は、2024年6月13日公開の「 Nature Communications 」誌に掲載された。
 
<用語の解説>
◆カチオン :プラスの電荷を持ったイオンのこと。陽イオンともいう。特に炭素原子上にプラス電 化を持つ炭素カチオンは合成化学において重要な活性種である。
◆アニオン :マイナスの電荷を持ったイオンのこと。陰イオンともいう。
 
ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/240614_pr.pdf