2024年06月14日
広島大調査、下水管の老朽化 河川水質に影響
【カテゴリー】:環境/安全
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学大学院 先進理工系科学研究科の尾崎則篤准教授らはこのほど、「都市インフラの老朽化が雨水管への漏出を通して河川の水質に影響を与えている」とする調査結果を発表した。

■背景
 都市部では現在、生活排水と雨水排水が分離して設計されている( 分流式下水道 )が、管路の老朽化によって、雨水や地下水が家庭排水管に流入し、逆に家庭排水が都市の水域に漏出する可能性がある。日本では、これらのインフラが50年以上使用されているため、老朽化と更新は重要な課題となる。

 排水管の漏水は、都市の地下水や地表水を汚染する可能性があるが、その診断は難しい。カメラによる直接観察、スポット漏水測定、管の状態監視、トレーサー試験などの方法があるが、漏水率の推定はそれぞれで大きく異なっている。漏水の影響に関する研究や調査方法は十分に発展していない。
 
■研究成果
 研究グループは今回、比較的最近整備された市街地(10年程度)から古い市街地(40年以上)まで、異なる5つ市街地の雨水流出管で、カフェイン、香料物質、多環芳香族炭化水素をトレーサーとしたモニタリングを行った。その結果、古い市街地になるほど、高濃度のカフェインを見出した。40年以上経過した下水道区域のカフェイン濃度は、10年程度よりも少なくとも2桁高く、生活廃水の1~10%に相当する濃度に達していた。それだけ汚水管の漏れが生じていることが示唆された。

■今後の展開
 日本は大都市、中小都市でも現在、下水道の整備はかなり進んでいる。だが、整備されたものはすでに50年ほど経過しており、老朽化が問題となる。それらが公共用水域に影響を与えているかもしれないと思われつつその影響は未知のままとなっている。今回の手法を活かして、さらなる調査が必要と考えられる。
 本研究成果は2024年4月5日に「Environmental Chemistry Letters」に掲載された。