2024年07月09日
東工大、世界最高ペロブスカイト酸化物創製
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:東京工業大学

 東京工業大学の八島正知教授(理学院)は8日、中低温で世界最高クラスのプロトン(H+、水素イオン)伝導度を示す新物質Ba5Er2Al2SnO13を創製・発見したと発表した。さらに東北大学の南部雄亮准教授らと共同で中性子回折データを測定し、結晶構造を明らかにした。また第一原理分子動力学シミュレーションを行い、高いプロトン伝導度の原因を明らかにした。
 六方ペロブスカイト関連酸化物の新物質群を創製し、Ba5Er2Al2SnO13が世界最高クラスのプロトン伝導度と高い安定性を示すことを今回発見した。

 現在実用化されている固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、動作温度が高いため、低コスト化と用途拡大のために、中温(300℃付近)で高いプロトン伝導度を示す材料が求められている。従来の候補材料であるペロブスカイト型プロトン伝導体は、高い伝導度を実現するために化学置換が必要だ。
 一方、六方ペロブスカイト関連酸化物は近年、化学置換なしで比較的高いプロトン伝導度を示す新材料として注目されている。だが、これらの材料は、水の取り込み率が100%ではなく、伝導度をさらに向上させる余地があった。

 八島教授らは今回創製した六方ペロブスカイト関連酸化物の新物質群( Ba5R2Al2SnO13 )のうち、とくに、Ba5Er2Al2SnO13は世界最高クラスのプロトン伝導度、高い安定性と完全水和(100%の水の取り込み率)を示すことが分かった。結晶構造解析やシミュレーションの結果、酸素空孔が大量に存在するBaO層で完全水和が起こるためプロトン濃度が高いこと、[ErO6-ZrO6-ErO6]八面体層においてプロトンが高速移動することが、高いプロトン伝導度の原因であることが分かった。
同研究成果は米国化学誌「Journal of the American Chemical Society」に24年6月25日掲載された。

<用語の解説>
◆Ba5Er2Al2SnO13:バリウム、エルビウム、アルミニウム、スズおよび酸素から構成される酸化物。本研究で創製・発見した新物質である。六方ペロブスカイト関連酸化物と呼ばれる物質群の一つで、この物質群はプロトン伝導体あるいは酸化物イオン伝導体として注目されており、六方ペロブスカイト関連酸化物のイオン伝導は新しい研究分野である。

ニュースリリース参照
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20240708_03web_perovskite.pdf