住友化学工業

CHEMNET TOKYO

2025年02月20日
北大、pH調整による微生物二次代謝産物を作り分け
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学農学部の橋本誠教授らの研究グループは18日、pHを調整した液体培地上で糸状菌Trichoderma virensを生育させることで、フラノステロイド群の安定、かつ、それらの作り分けを可能とする技術を開発したと発表した。

 糸状菌の二次代謝産物であるビリジン、ビリジオールは、希少フラノステロイドで、がんの発生や転移促進に関わるホスファチジルイノシトールリン脂質キナーゼを強く阻害することが知られている。だが、微生物のほとんどはその生育に二次代謝産物を必要としないため、単独培養で安定的に得ることが難しい。また、それらの合成には、高度な有機合成技術や時間、費用が必要となる。

 今回の研究で、pHを調整した液体培地上でTrichoderma virensを振とう培養させるのみで、ビリジン、ビリジオールの選択的な生産方法を確立した。pH3の培養条件ではビリジンを約50mg/L、pH2の培養条件ではビリジオールを約60mg/Lで得ることに成功した。また、β-ビリジンはビリジンの立体異性体で、その絶対配置はこれまで明らかにされていなかった。今回、安定的なビリジン供給技術を確立したことで、ビリジンからβ-ビリジンへの不可逆的な変換方法を確立し、再結晶化にも成功した。その結果、β-ビリジンをX線結晶解析、及び振動円二色性スペクトル解析することにより、その絶対配置を明らかにした。

 これらの研究成果は、今後の新規抗がん剤開発研究に有益な情報を提供するとともに、未だ完全な生合成経路が分かっていないフラノステロイド群の合成経路解明に役立つと期待される。
なお、本研究成果は1月24日公開の「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。

(詳細)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-87070-z





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