住友化学工業

CHEMNET TOKYO

2025年03月05日
九大など、PEGに対する抗体産生機構解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学、北海道大学、東京科学大学などの研究グループは5日、抗体を産生させないポリマーの設計指針を得ることを目的として、免疫系がどのようにしてPEGに対する抗体を産生するのかのメカニズムを明らかにしたと発表した。
 
 抗体の前駆体であるB細胞受容体とPEGの相互作用は、予想通り非常に弱かった。だが、PEGが単純な構造の繰り返し配列であることから、B細胞受容体はPEG鎖の滑りを許容することで、PEGを十分な時間捕捉することができ、その結果、B細胞が活性化して抗体産生に至ることが明らかとなった。また、一般にB細胞受容体は、変異を繰り返すことで標的に対する親和性を向上させるが、PEGは極端に細いポリマー鎖であるため、トンネル構造を作るという単純な変異戦略により、PEGを強く捕らえる抗体を作り出していることが分かった。

 ポリエチレングリコール(PEG)は、長年、抗体を産生しないポリマーと認識されてきた。血中のタンパク質と相互作用しにくい性質を利用して、医薬品の安定性を高める目的で使用され、ヒトに投与されてきた。しかし、近年、ヒトの体内でPEGに対する抗体が生成し、PEG化医薬品の活性が損なわれていることが分かってきた。真に抗体を産生させないポリマーの開発が求められているが、これを設計する指針はまだない状況にある。

 今回研究で、PEGがB細胞受容体に認識されて抗体の産生に至るメカニズムが明らかになったことから、抗体を産生させないポリマーの開発の指針が得られた。今後、これらの指針を活用して、真に抗体を産生させないポリマーが開発されると期待される。
 なお同研究成果は2月10日付の「Journal of Controlled Release」に掲載された。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/60856/25_0305_01.pdf





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