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2025年03月06日
理研、RNAポリメラーゼの一時停止、仕組みを解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所生命機能科学研究センターの関根俊一 チームリーダーと東京大学定量生命科学研究所の胡桃坂仁志教授らの共同研究グループは6日、遺伝情報を読み取るタンパク質の巨大複合体「RNAポリメラーゼ2」(RNAP2)がDNAの配列を読み取り、RNAをつくる転写を始めた直後に、転写を抑制する転写伸長因子やヌクレオソームという構造体との相互作用によって転写を一時停止する仕組みを、分子レベルで明らかにしたと発表した。

 同研究成果は、遺伝子が発現する際の複雑な制御メカニズムへの理解を深め、がんやウイルス感染症といった疾患の仕組みの解明に貢献すると期待される。

 ヒトを含む動物細胞の核内では、転写を開始したRNAP2は、DNA上を少し進んだところで一時停止することが知られています。これは、それ以降の転写を進める準備の整ったRNAP2だけを通過させるチェックポイントと考えられており、適切なタイミングで転写を再開させることで、遺伝子の発現を制御する主要な機構の一つとしても機能している。

今回、共同研究グループは、タンパク質の巨大複合体を観察できるクライオ電子顕微鏡を用いて、負の転写伸長因子NELFと結合したRNAP2がヌクレオソームと衝突し、転写が一時停止する様子を観察した。その結果、NELFは、衝突後のRNAP2をヌクレオソーム内部に侵入させ、ブレーキのようにRNAP2の進行を停止させる強固な複合体の確立に寄与することを明らかにした。
 同研究は、科学雑誌「Science Advances」オンライン版(3月5日付)に掲載された。

<用語の解説>
◆転写伸長因子 :RNAポリメラーゼに結合し、転写反応を制御するタンパク質を転写因子と総称し、その内RNAの伸長ステップを制御する因子が転写伸長因子。本研究では、転写反応を抑制する負の転写伸長因子としてNELFとDSIFを、転写伸長を促進する正の転写伸長因子としてTFIISを用いて構造解析を行った。
◆ヌクレオソーム :DNAを巻き付けることで、長大なDNAを核内に納めるタンパク質をヒストンという。ヒストン8量体の周りにDNAが巻き付いた構造をヌクレオソームといい、真核生物においてヌクレオソームを基本単位とするゲノムDNAとタンパク質の高次複合体をクロマチンと呼ぶ。

(詳細)
https://www.riken.jp/press/2025/20250306_1/index.html





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