2025年03月28日
早大など、テラヘルツ波で耳の病気を見える化
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:早稲田大学

 早稲田大学情報生産システム研究科の芹田和則 准教授は27日、大阪大学、神戸大学などの研究グループと共同で、マウスを用いた実験により、テラヘルツ波を利用して、音をつかさどる耳の器官である「内耳蝸牛」のマイクロメートルスケールの小さな内部構造を3次元で非破壊観察することに世界で初めて成功したと発表した。

 難聴の多くは、耳の奥にある器官「内耳蝸牛(かぎゅう)」の障害が原因とされている。従来の光計測では骨を透過できず、X線では被ばくのリスクがあり、内部観察が困難だった。研究グループは、マウスを用いた実験により、テラへルツ波を利用して蝸牛の小さな内部構造の3次元非破壊観察に初めて成功した。
 
 蝸牛は骨に囲まれているため、光では骨を透過できず、X線では照射臓器に被ばくのリスクがあり、従来の手法では安全に内部を観察することが困難だった。また、テラへルツ波は非破壊での計測ができるが、波長が長く、いわゆる回折限界の影響で、小さな物を観察することは困難だった。
  
 研究グループは、光からテラヘルツ波を発生する独自の計測法と画像解析技術によってこの問題を解決し、高解像度な3Dイメージングを実現した。これにより、蝸牛内部を輪切りにしたような断面図にして可視化することが可能になった。この技術は、感音難聴を始めとする耳疾患の診断や、生体内でのオンサイト診断に貢献できる。さらに、テラヘルツ波を活用した新しい内視鏡や耳鏡などの医用デバイス開発も期待できる。同成果は米国の国際学術誌「Optica」に25年3月27日掲載された。

ニュースリリース参照
 https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP689009_X20C25A3000000/