2025年04月04日
広島大、腱・靱帯と筋骨格をつなぐ仕組みを解明
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:広島大学

 広島大学大学院の宿南知佐教授らの研究グループは、愛媛大学、京都大学、岐阜大学などと共同で、体の組織である軟骨と腱・靭帯の相互作用を明らかにするため、“光る”遺伝子改変マウスを用いて、これらの組織がどのようにつながっているのかを高解像度の三次元的(3D)蛍光イメージングで解明したと発表した。
 研究グループはScxTomatoSox9EGFP レポーターマウスを用いた蛍光イメージングにより、軟骨と腱・靱帯の組織間相互作用を明らかにする研究を行った。
 蛍光レポーターマウスを用いて、組織の薄い切片による解析および共焦点顕微鏡や二光子励起顕微鏡による3D解析を行い、胚発生過程において腱や靭帯と軟骨がどのように関わり合っているかを視覚的に捉えることができた。また、SHG信号と重ね合わせて、赤色蛍光を発する腱や靭帯を詳しく観察し、成熟した腱と未成熟な腱を明確に区別できることも分かった。
 蛍光レポーターマウスと腱・靱帯の成熟に必要な転写因子Scxの欠失マウスを組み合わせることで、Scxが腱・靱帯の成熟だけでなく筋肉の形づくりや腱を介した軟骨・骨への付着を制御していることも明らかになった。
 今後、体を動かす組織が連携する成り立ちの理解が進むことで、スポーツ障害や加齢による腱・帯の損傷に対する再生医療への応用が期待される。
 同研究成果は今年3月26日付けで、「Development」に掲載された。
 
<用語の解説>
◆蛍光レポーターマウス
 蛍光レポーターマウスは、蛍光蛋白質の遺伝子を持ち、特定の遺伝子の発現や細胞の動きを蛍光の光を使って“見える化”するために作られた遺伝子改変マウス。生体内で標的とする遺伝子が発現すると、蛍光蛋白質が産生され、光るようになる。これを蛍光顕微鏡(従来の光学顕微鏡にさらに機能を追加した顕微鏡で、特定の波長の光を照射して蛍蛋白質を励起し、その発する光を検出することができるもの)で観察することができる。