| 2025年04月16日 |
| 北大、早大など、力学系の内部構造を解析学習 |
| 【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:早稲田大学 |
北海道大学の松原崇教授、早稲田大学の吉村浩明教授、神戸大学の谷口隆晴教授らの研究グループは15日、機械系や電気系など様々な物理ドメインのシステムが結合した力学系を、高精度かつ統一的に表現できる新たな深層学習手法「ポアソン=ディラック ニューラルネットワーク(PoDiNNs)」を開発したと発表した。様々な物理システムが絡み合った力学系を各要素に分割できる深層学習モデルを開発した。 従来の深層学習モデルは、解析力学の知見を用いることで、高精度に挙動をモデル化し、未来の変化を予測することに成功していた。しかし、主に機械系の運動に特化しており、電気回路や油圧系といった他の物理ドメインへ拡張することが困難でした。また対象を一体的な力学系として扱うため、複数の要素が結合した大きな力学系(連成系)の学習が難しく、内部構造に対する理解や解釈を与えないという問題があった。 研究グループが提案するPoDiNNsは、単一の力学系を、エネルギーを保持する素子、エネルギーを消費する素子、エネルギーを外部から与える素子にそれぞれ分割し、ディラック構造という数学的対象を用いてそれらの素子の結合系として力学系全体を表現する。そのため、データからの学習によって、それぞれの素子の特性と、力学系内部の結合パターンを同時に同定することができる。これにより、長期にわたる予測の安定性が向上するだけでなく、要素間の相互作用を可視化しやすくなるため、ロボット工学や電力制御、構造物の振動解析や回路設計など、多様な応用への可能性が広がる。本研究の成果は、物理法則に根ざした学習モデルの新たな方向性を示し、マルチフィジックス系の設計・制御・最適化など幅広い分野での発展が期待される。 同研究成果は、2025年4月24日~28日にシンガポールで開催される、下記の国際会議で発表の予定だ。 ・シンガポール国際会議 :International Conference on Learning Representations (用語の解説) ◆ディラック構造(Dirac structure) :力学系の拘束を記述するための数学的枠組みであり、本研究では特にサブシステム同士の結合をエネルギーの流入出として記述するために用いている。 (詳細) https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/250415_pr3.pdf |