2025年05月14日
産総研など、血糖値測定用の電極を開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

 産総研、東北大、テクノメデイカなどの研究グループは12日、血糖値測定用の電極を開発したと発表した。血糖値は、グルコースが酵素(GOx)によって酸化される過程で生成される過酸化水素(H2O2)を白金(Pt)の作用極で分解し、その際に生じた電流をグルコース濃度に対応させることで電気化学的に測定できる。
 しかし、H2O2の検出に適した分解電位は、血液中の溶存酸素やビタミンC(アスコルビン酸)などの分解電位と重なるため、正確に測定するには、これらの夾雑物をあらかじめ除去する必要があった。
 従来のPt電極を使用したセンサーでは、溶存酸素の影響を受けない分解電位でH2O2を分解し、ビタミンCは夾雑物除去膜で除去する方法がよく利用されている。本研究では、グラフェン(G)でコーティングした多孔質シリカ球(PSS)に、H2O2と反応するプルシアンブルー(PB)を付着させたPB/G/PSSを作用極とすることで、溶存酸素およびビタミンCの分解電位をシフトし、これら夾雑物の影響を受けずにH2O2を測定可能なセンサーを開発した。
 開発したグルコースセンサーは、空腹時の血糖値(グルコース濃度:70~100 mg/dL)の濃度範囲を含み、より広範囲の0~270 mg/dLにおいて血中グルコース濃度を測定できる。さらに、作用極と参照極の両方にPB/G/PSSを用いた場合にも同様の性能を示すことを確認した。
同技術の詳細は5月12日付「ACS Electrochemistry」に掲載された。

<用語の解説>
◆プルシアンブルー(PB)
 シアン化物イオンが鉄イオンと強く結合し、安定な化合物を形成した濃青色の物質。プルシアンブルーを使用したことで、従来の作用極と違い、夾雑物の影響を受けない。