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| 2025年05月26日 |
| 北大、マグネシウム電池の劣化挙動を解明 |
| 【カテゴリー】:ファインケミカル 【関連企業・団体】:北海道大学 |
北海道大学大学院理学研究院の小林弘明准教授らの研究グループは、次世代蓄電池の一つ「マグネシウム電池」の課題解明に成功したと発表した。電池の正極側の分解反応を解析した。 このところ、次世代の蓄電池として、資源的制約のないマグネシウム電池の研究開発が盛んだが、この実用化にはマグネシウム電池の高エネルギー化が必須で、そのためにも近年開発された弱配位性アニオンを有するマグネシウム塩を用いたエーテル系電解液が注目されている。 この電解液を用いることでマグネシウム金属負極側の反応が効率よく進行する。だが、一方で酸化物正極側の反応に対しては可逆性が悪く、低可逆性を示す原因の解明およびこの電解液に適用可能な正極材料の創出が求められる。さらに、電解液のロットや電池を作製する環境によって正極の性能が大きく変化する問題があり、実験の再現性に支障をきたすといった課題もあった。 今回、マグネシウム電池の正極と電解液の界面で起こる反応について詳細に調べたところ、電解液中に微量に含まれる水分が劣化挙動の主原因であり、電解液成分の酸化分解だけでなく、集電体や電池部材に用いる金属の腐食、正極の溶出を促進することが分かった。 電解液への水分混入の抑制は、リチウムイオン電池でも重要だが、今回の知見からマグネシウム電池の電解液はより注意深く水分量を管理することが実験結果の再現に重要であることを意味している。一方で、低水分量の電解液を使用することで、高電圧充放電サイクルが可能であることを見出しており、水分混入を恒常的に抑えることでマグネシウム電池の高エネルギー動作の実現が期待できる。 同研究成果は25年5月19日公開の「Advanced Energy Materials」誌に掲載された。 <用語の解説> ◆ 弱配位性アニオン : マグネシウムイオンとの相互作用が弱く、マイナスに帯電したイオンの総称。アニオンの代わりに溶媒(今回はエーテル)がマグネシウムイオンに配位している。 ◆ エーテル系電解液 :ジグリムやテトラヒドロフランに代表されるエーテルを溶媒に使用した電解液。マグネシウム電池では、金属マグネシウム負極の反応はエーテル系またはスルフォン系電解液を用いた場合に限られ、リチウムイオン電池で用いられているエステル系電解液が使用できないため、高エネルギー化の妨げとなっている。 ニュースリリース参照 https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/250521_pr2.pdf |