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2025年05月27日 |
東北大、iPS細胞の生体リズムと培養への影響観測 |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:東北大学 |
東北大学大学院 歯学研究科の江草宏教授らの研究グループは26日、マウスのiPS細胞を用いて骨芽細胞への分化を誘導する際に、従来の接着培養と、細胞を揺らして刺激を与えながら培養する(振盪培養)方法の違いが、細胞内の概日リズムに与える影響を解析した。従来の接着培養では、iPS細胞において時計遺伝子の発現に周期的なリズムが認められたが、振盪培養ではこのリズムが顕著に抑制された。 人工多能性幹細胞(iPS細胞)を骨の細胞に誘導する過程で、細胞を揺らして培養すると、時計遺伝子の発現リズムが減弱することを発見した。 この分子機構として、細胞内のシグナル伝達系における YAP と TEAD の相互作用が促され、その結果、時計遺伝子のタンパク質が分解されていることを見出した。さらにYAPとTEADの相互作用を阻害する化合物を用いることで、iPS細胞を揺らしながらも概日リズムを回復させ、骨の細胞への誘導を至適化できることを実証した。 本研究は、iPS細胞を用いた再生医療やバイオエンジニアリングにおいて、生体リズムという新たな視点が培養技術の進歩に貢献することを示している。 同研究成果は5月24日に科学誌「Cell Death Discovery」のオンライン版に掲載された。 <用語の解説> ◆ YAP :細胞が受ける力に反応して細胞核に移動し、遺伝子の発現を調整するセンサーとして働くタンパク質。組織の成長やがん化などにも関与する。 ◆ TEAD :YAPと結合して働く転写因子で、細胞の分化に影響を与える役割を担う。 ◆ 時計遺伝子 :体内時計をつかさどる遺伝子で、機械的な刺激とも連動し、生理機能や組織再生に関与している。 ニュースリリース参照 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20250526_03_ips.pdf |