2025年06月06日

北大、世界初・大規模なニシンの産卵 可視化に成功

【カテゴリー】：ファインケミカル 【関連企業・団体】：北海道大学

北海道大学 北方生物圏フィールド科学センターの宮下和士教授らは5日、一般的に群来（くき）と呼ばれる、大規模なニシン（Clupea pallasii）の集団産卵の行動を世界で初めて可視化し、産卵時の行動が周期的に変化することを発見したと発表した。大規模なニシンの集団産卵を実験水槽で再現した。 　集団産卵は魚類に広く見られる繁殖様式で、群れの中で複数個体が精子の放出と卵の放出を繰り返す特徴がある。集団産卵の成功の有無は個体群維持に大きく関わる漁業資源にとって重要なイベントだが、これまでは野外で突発的に発生するため目視観察が難しかった。 　 　研究グループは、ニシンを用いて大型の実験水槽で集団産卵を再現し、行動記録計（ロガー）を装着することで産卵時の個体の行動計測を実施した。これにより、ニシンの集団産卵行動の可視化に初成功した。 　実験は23年4月に函館市国際水産・海洋総合研究センターで実施した。911尾のニシンを水槽へ投入し、そのうちオス38尾、メス15尾にロガーを取り付けた。翌日の夜間に大規模な集団産卵が起き、人工海藻や水槽壁面に腹部を擦り付ける放精・放卵が確認された。 　ロガーの記録より、1匹目の産卵後、30～40分で複数個体に行動変化が伝搬し、その後は約105～210分周期で行動変化が生じていることが明らかになった。これは、精子中のフェロモンが行動の同調を促し、刺激への慣れが周期的変化を生じさせたと考えられる。同調行動は受精率向上、周期的変化は配偶子放出のリスク分散に繋がり、繁殖成功を支える重要な仕組みであると示唆される。 　本研究成果は4月2日公開の「Scientific Reports」誌にオンライン掲載された。 　 （詳細） https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/250605_pr2.pdf