2025年06月30日
三井化学、高酸素透過性細胞培養プレート上市
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:三井化学

 三井化学は30日、同社がもつユニークな素材と精密加工技術を組み合わせた高酸素透過性の細胞培養ウェルプレートInnoCellを開発したため、7月から上市すると発表した。
 高機能プラスチック素材を使い、高酸素高透過培養容器を開発した。
 医薬品開発分野の研究はこのところ、低分子医薬から抗体、核酸医薬、さらに遺伝子および細胞治療、再生医療分野に至るまで、創薬モダリティの多様化が急速に進んでいる。米FDAは先に、新薬の臨床までに実施してきた動物試験を段階的に廃止し、ヒト由来の細胞を体外で培養したミニ器官(オルガノイド)、細胞凝集体(スフェロイド)や生体模倣システム、AIなどの技術を用いて、薬の有効性や安全性を評価する方針を発表した。
 さらに、患者の細胞を体外で培養し、体質に応じて効果的な治療を行う、個別化医療の実現の取り組みも始まっている。今後、医薬品の社会実装に際して、創薬スクリーニングにおける正確な結果を迅速に提供できる細胞培養のプロセス部材のニーズはさらに高まる傾向にある。

■InnoCell
 InnoCellとは、細胞培養におけるイノベーション「Innovations in Cell culture」実現に向けた、三井化学の細胞培養製品・サービスのブランド名。同社は「細胞培養から、世界を元気に」の実現に向けて、化学のちからで創薬モダリティへのワンストップソリューション提供に挑戦しており、今回、細胞培養ウェルプレートとして、非接着性の細胞やオルガノイド、スフェロイドの培養に適した非接着表面(Nタイプ)、また医薬品のスクリーニングに多用される肝細胞の培養に適したコラーゲンコート(Cタイプ)のプレートを発売する。

 InnoCellプレートシリーズは、体外での細胞培養に適した酸素供給を実現する。長期間、元気な細胞を体外で培養できるスフェロイド内部で起こる壊死を軽減できるため、正確な医薬品のスクリーニング結果の提供に期待されている。また、これまで体外で培養が難しかった、ヒト膵がん患者由来オルガノイドの増殖性の向上により、個別化医療における患者に適した医薬品の早期提供の可能性も高まっている。プレートへの薬剤の吸着性が低く、ガラスに匹敵する蛍光観察性能を備えている。試験に供した薬剤が正確に細胞へ作用し、細胞の構造、機能などが可視化できる価値も認められている。

■今後の展望
 同社はInnoCellについて、創薬モダリティ、個別化医療および再生医療の社会実装への貢献を目指して、有効性や安全性評価などを急いでいる。将来、人々のいのちと健康、豊かなくらしに貢献する革新的なソリューションとして提供していく方針だ。
 同社は、メディカル領域を第3の柱に育成させていく事業戦略を掲げており、今後も技術基盤の活用とパートナーとの連携強化による技術革新に注力していく方針だ。


<ニュースリリース参照>
https://www.chem-t.com/fax/images/tmp_file1_1751265225.pdf