| 2025年10月10日 |
| 慶応大など「細胞膜の電気的応答に方向性」 |
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慶應義塾大学の山本詠士准教授(理工学部)、東北大学の平野愛弓教授(材料科学高等研究所 )らの研究グループは9日、分子動力学シミュレーションと人工細胞膜実験を組み合わせることで、生体膜に対する電場作用の新しい側面を解明したと発表した。細胞膜の電気的応答に方向依存性(異方向)を発見した。従来広く研究されてきた膜垂直方向の電場とは異なり、膜水平方向の電場が脂質二重膜の構造を顕著に変化させることを明らかにした。 生体膜は細胞内外を仕切る単なるバリアではなく、イオンチャネルや受容体など多様な膜タンパク質の機能を支える能動的なプラットフォームだ。その物理的性質は電場の影響を強く受けるが、これまでは主に膜厚方向の電場が注目されてきた。しかし、実際の生体内では上皮細胞の密着結合部位やナノポア内のイオン流束に伴って膜水平方向にも電場が発生する。こうした「水平電場」の作用機構は十分に理解されていなかった。 今回研究では、DOPCとコレステロールからなるモデル膜を対象にシミュレーションと明視野観察を行い、膜水平/垂直電場の効果を検討した。その結果、膜水平電場は膜面積の収縮と脂質鎖の秩序化を引き起こし、コレステロールを含む膜でも顕著な構造変化を誘発することが明らかになった。一方で、膜垂直電場は同じ強度ではほとんど影響を与えなかった。さらに、人工的に形成した脂質平面膜に電圧を印加した実験では、膜水平電圧が膜面積を縮小させるのに対し、膜垂直電圧では顕著な変化が見られず、シミュレーションの結果を裏付けた。 これにより、生体膜は電場の方向によって全く異なる応答を示すことが初めて実証された。これは、生体膜に対する電気的作用を三次元的に捉える新しい概念を提示するものとなった。 同研究成果は米国化学会「The Journal of Physical Chemistry Letters」(25年10月6日)に掲載された。 (詳細) https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20251009_02web_electric.pdf |