| 2026年02月19日 |
| 九大・調査、米国の有害化学物質汚染が国境超え |
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九州大学大学院の加河茂美主幹教授をはじめ、尾道市立大学、近畿大学からなる研究グループは18日、北米自由貿易協定(NAFTA、現:米国・メキシコ・カナダ協定)により形成された国際サプライチェーンの変化が、有害化学物質による環境汚染の地域分布にどのような影響を及ぼしてきたかを実証的に明らかにしたと発表した。 米国、カナダ、メキシコの3か国を対象に、2006~14年に排出された598種類の有害化学物質を分析し、自由貿易の進展が汚染をどの国に集中させたかを定量的に評価した。その結果、最終的に製品を消費する国と、実際に汚染が発生する国とが一致しないという問題が生じていることを明らかにした。 研究には、各国の化学物質排出登録制度(PRTR)と世界規模の産業連関表を統合し、国際貿易を通じて誘発される有害化学物質排出を包括的に把握した。分析には、新たに開発した「空間的構造分解分析(SDA)」を用い、排出量の変化を「排出強度の変化」「生産技術の変化」「最終需要の変化」「国際貿易構造の変化」といった要因に分解した。これにより、NAFTA域内における二国間貿易構造が汚染に果たした役割を詳細に検証した。 その結果、米国とメキシコ間の中間財貿易構造の変化が、メキシコ国内の有害化学物質排出を大きく押し上げていることが明らかになった。2014年には、こうした貿易構造の変化による排出移転が、メキシコの有害化学物質排出全体の約2.8%を占めた。特に、米国の最終消費がメキシコの製紙産業を通じて水銀排出を増加させるなど、具体的な汚染誘発サプライチェーン経路が特定された。 一方、米国では、規制強化や技術改善により国内の有害化学物質排出が減少しており、その削減効果が国境を越えた生産移転によって部分的に相殺されている実態も示された。これは、環境規制の厳しい国での排出削減が、規制の比較的緩やかな国への汚染移転につながる可能性を示唆している。 今回研究の成果は、自由貿易が経済的利益をもたらす一方で、環境負荷を「見えにくい形」で他国に押し付けるリスクがあることを明確に示した。今後は、国境を越えたサプライチェーン全体を対象とする有害化学物質管理や、北米環境協力協定(NAAEC)を通じた域内協調の強化、さらには消費国側の責任を踏まえた政策設計が不可欠であることを、今回研究が強く示唆した。 なお、同研究成果は、2月10日に学術誌「 Structural Change and Economic Dynamics 」に掲載された。 ニュースリリース参照 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1416 |