2026年03月18日
九大、ノロウイルス抗体“多点攻撃”の新戦略
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:九州大学

 九州大学大学院薬学研究院の西田基宏教授と東京科学大学物質理工学院の谷中冴子准教授らの研究チームは17日、世界的に流行するノロウイルスの主要株GII.4と、新興株GII.17に対するモノクローナル抗体を作製し、ウイルスとの結合メカニズムを分子レベルで解明したと発表した。

 ノロウイルスは年間約7億件の感染を引き起こし、医療・社会コストは600億ドル規模に達する深刻な公衆衛生課題だが、既存の抗体やワクチンは、ウイルスの多様な変異に対応することが難しく、より強力で広域に作用する抗体設計が求められていた。

 研究チームは、IgM抗体が持つ10本のFab(抗体の抗原結合部位)による「多価性」に着目し、その結合強化の仕組みを世界で初めて定量的に示した。

 高速原子間力顕微鏡により、IgM抗体がウイルス様粒子表面を“スキャン”しながら多点で結合する様子をリアルタイムで可視化するとともに、表面プラズモン共鳴(SPR)法による相互作用解析で、抗原密度が高い環境ではIgMの結合力が最大100倍に増強されることを明らかにした。この「アビディティ効果」は、Fab単体とウイルスの親和性が低くても、複数の結合点を同時に利用することでIgG抗体に匹敵する高い結合力を発揮することを示している。同研究成果は、3月12日付の「Protein Science」誌に掲載された。

<用語の解説>
◆IgM抗体(Immunoglobulin M):免疫応答の初期に産生される抗体。10本のFab(抗原結合部位)を持つ多価構造により、複数の抗原に同時に結合できる。
◆Fab(Fragment antigen-binding):抗体の抗原結合部位。抗体がウイルスや細菌などの抗原を認識するための構造。