2002年07月08日
三菱化学と島津製作所、二酸化炭素からカーボンナノファイバーを生成
パイロットプラントで実用化試験開始
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:島津製作所、三菱化学、三菱化学エンジニアリング

 三菱化学と島津製作所の両社は8日、二酸化炭素を触媒のもとでメタンガスと化学反応させ炭素・水に変換(固定化)する、二酸化炭素固定化技術の共同試験を開始すると発表した。年産5万トン規模のパイロットプラントにより、実証試験を進める。試験期間は1年間の予定。

 今回の実証試験では、変換された炭素から様々な産業応用が期待されているカーボンナノファイバー(直径100nm以下の機能性炭素繊維)抽出の技術開発も行う。

 同技術は、従来焼却などにより廃棄されていた有機廃棄物を有効利用して、地球温暖化の主因である二酸化炭素の排出抑制を実現しようとするもので、
島津製作所は、環境対策用設備として、2003,4年の商品化を目指す。三菱化学は、生成炭素にふくまれるカーボンナノファイバーを使い、これまで大量生産が困難だった、カーボンナノマテリアルズの製造方法確立を目指す。

<開発の経緯>
 二酸化炭素固定化技術の開発は、島津製作所が1997年から3年間にわたり財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)と共同で、二酸化炭素の固定化に関する反応プロセスの基礎研究を行ったのがはじまり。1999年にはサッポロビールと共同で、バイオガス(二酸化炭素をふくむメタンガス)の触媒性能に与える影響について共同実験を行った。
 
 <期待されるインパクト>
 同技術では、食品工場やゴミ処理場で生じる有機性廃棄物から微生物により作られたバイオガス(メタンガス・二酸化炭素)を用い、これを触媒反応により低エネルギーコストで水素を作り出す。この水素を用いて、バイオガス中の二酸化炭素を炭素・水に固定化する。また固定化した炭素は、カーボンナノファイバーなど産業資源としての活用が見こまれ、有機性廃棄物の有効なリサイクル処理方法として注目されている。

 島津製作所は、食品工場などでの嫌気性メタン発酵施設の後段に二酸化炭素削減を目的に本技術(装置)が設置されることを目指す。またパイロットプラントの開発を担当した三菱化学エンジニアリングとも共同で、環境処理設備メーカなどとの連携も視野に入れた事業展開も計画している。
 
 三菱化学は、技術蓄積をもとにカーボンブラックや炭素繊維といった各種炭素材料を開発・事業化してきた。今後商品用途に応じたカーボンナノファイバーの品揃え、更に三菱化学の有する触媒等のコア技術を用いた当技術の展開により、従来の方法では高価で大量生産が困難とされてきたカーボンナノマテリアルズの製法確立を目指す。
 
 従来のカーボンナノファイバーの製造法に比較して、低コストかつ大量生産に適した方法であり、導電性材料、樹脂補強材、機能性顔料、電磁波吸収材、電極材等の商品用途に応じたカーボンナノファイバーの製造が可能になるとしている。