2002年09月17日
有機ELの発光材料プロジェクト ディスプレイ伸長、高分子系が有力か
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:出光興産、三洋電機、昭和電工、住友化学、セイコーエプソン、ソニー、東芝、東北パイオニア、トッキ、日産化学、パイオニア、三菱化学

 LCD(液晶)やPDP(プラズマディスプレイパネル)を使ったFPD(フラットパネルディスプレイ)の需要が好調な伸びを示しているなかで、これを追う有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイと材料の製品化を目ざす動きが高まっている。
 
 有機ELは低分子系の東北パイオニア、三洋電機や、高分子系のセイコーエプソン、東芝松下ディスプレイテクノロジー、ソニーなどがディスプレイで、また素材やデバイスで出光興産、日産化学、新日鉄化学、三菱化学、住友化学、昭和電工などが開発研究を急いできた。
 
 すでに携帯電話、カーナビ、PDA(電子手帳)などの小型ディスプレイの実用化は進んでいるが、今後は10インチ、20インチのディスプレイ開発が課題。
 
 ディスプレイでは1昨年ソニーが13インチ、今年は東芝松下ディスプレイテクノロジーが17インチの試作品を発表して話題を読んだ。しかし製品の寿命やコスト低下に問題をかかえており、実用化は2004〜2005年の見通しとなっていた。
 
 技術的にはわが国のPDPは大型(30〜40インチ)、超大型(40インチ以上)で世界をリードしている。しかし消費電力が高いのが欠点。この点、LCDは消費電力は低いが、韓国や台湾勢に先行されている。
 
 テレビモニターとして使われるディスプレイは2000年の市場が世界で約4兆円。2010年には10兆円市場になると予想されている。
 これを用途別に見ると2000年のノートPC1兆1千億円、デスクトップPC1兆5千億円、TV用(中小型)1兆2千億円、同(大型)3千億円から2010年には各2兆2千億円、3兆4千億円、2兆5千億円、1兆5千億円になるとの見方がある。
 
 有機ELは開発の速度にもよるが、2010年には2兆5千億円から5兆7千億円の市場になるともみられ、業界ばかりでなく経産省、大学などからも研究開発に力がそそがれている。
 
 有機ELの発光材料の開発の動向については材料の低分子系、高分子系のいずれかに対しても評価はいまのところ定まっていない。しかし、低分子系では発光材料をつくる際、ガラス板への真空蒸着を必要とするのに対し、高分子系はインクジェット法の印刷、ロール・ツウ・ロールによる大面積・低コスト成膜・積層が真空蒸着なしにでき、発光プロセスを簡単にすませるといった利点もある。
 
 さらに60インチの大画面化が進むほか、安価なICとして情報タグへの利用、また有機太陽電池への活用も考えられ、各方面から強い関心がよせられている。
 
 経産省は省エネルギー型次世代平面(フラット)ディスプレイを目ざす高分子有機EL発光材料プロジェクトを手がける考えで、大阪大学(横山教授)、住友化学、トッキなどへの支援を検討中。同プロジェクトは平成15〜17年の3年間に事業費30億円(3年間)を投じるというもの。このうち半分の事業費は参加する産業界が負担する。