大島一史

生分解性プラスチック研究会

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K.OSHIMA

生分解性プラスチックを巡って


緒言:
 使用中は通常のプラスチック製品と同質の機能を持つグリーンプラ( 生分解性プラスチック )は,使用後は例えばコンポスト化装置により有機性廃棄物と共に微生物によってバイオマス形成に関わった後,最終的には二酸化炭素と水に分解する.
 有機性廃棄物と共に資化されコンポスト化される事をグリーンプラの姿形を変えた "再資源化" と捉え "バイオリサイクル" の一翼を担うと考える. グリーンプラは極めて今日的な素材であり,特性を生かした用途開発が盛んで,既に実用化されている製品も多くなった.

プラットフォームの整備:
 グリーンプラを巡る環境は大きく変わった.
 生分解性試験法の国際標準化(1999)とJIS化(2000)・環境関連6法成立(2000)・グリーンプラ識別表示制度発足(2000)・食品廃棄物リサイクル法基本運営方針でのグリーンプラ活用の明記化(2001)・識別表示制度の世界統合化への動き(2001)等,グリーンプラの普及・実用化に向けたプラットフォームの整備が急速に進んでいる. 

グリーンプラ識別表示制度の世界統合化:
 生分解性プラスチック研究会は2000年6月16日から "グリーンプラ識別表示制度" を発足させ運営している.
また2001年度にはコンポスト化に関わる規格を加え,欧米の同種制度との統合に向けた作業を開始した. 具体的にはドイツに於けるグリーンプラ製品認証機関であるDIN CERTCO,及び米国のBPI(生分解プラスチック製品協会)と共通規格制定に関わる覚書を締結し(2001年3月及び4月),実質的な世界標準規格制定に向けて歩み始めた.

食品廃棄物再資源化への関わり:
 ドイツでは今春からカッセル市で食品廃棄物再資源化モデル事業が大規模に進められており,グリーンプラ製品の資源循環型社会に於ける補完資材としての位置づけが認知されるかどうかに注目があつまっている.
 我が国でも有機系廃棄物の再資源化及びゼロエミッションシステムを通しての資源循環型社会への移行が本格的な国家施策となった事を反映して,小規模地方自治体でグリーンプラ製コンポストバッグを利用した分別排出・分別収集・コンポスト化による再資源化システムの実証試験が展開されている.

市場動向:
 1990年代初期に100トン弱で始まった我が国のグリーンプラ市場も,1,600-2,000トン(1998),2,500-3,000トン(1999),昨年度は3,500-4,000トン(2000)と拡大しており,本年度は更に大幅な成長が予測される. その背景にはマルチフィルム・育苗用ポット・土嚢等農林土木用素材の大きな展開とグリーンプラ識別表示制度の認知がある.
 昭和高分子は2003年前後に現在の3千トン/年規模のビオノーレ(PBS)生産設備の2万トン規模への増設を,またダイセル化学工業が現行千トン/年規模のセルグリーン(PCL)生産設備の5千トン規模への拡大を発表している. 三井化学も現行5百トン/年規模のレイシア(PLA)生産設備の拡大を計画している模様であり,カーギル・ダウの巨大とも言えるプラント稼働(本年秋口)に引き続いたグリーンプラ製造プラント増設が続き,価格問題は今や数年先には解決されると考える.
 2000年を元年とする循環型社会への移行に加えて,供給側の体制整備及び用途拡大が相俟って2003年度におけるグリーンプラ市場を2万トンと当研究会では想定している. 更に2010年代後半には全プラスチック製品市場の10%台をグリーンプラ製品で置き換える事を将来目標としており,実現に向けた戦略策定が当研究会の最大課題である.