「機能材料事業の強化を目指す」

 

三井化学・藤吉建二社長

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 社長に就任して1カ月余り。とはいっても、これまで中西宏幸前社長(現会長)を補佐し、経営企画担当として中期経営計画をまとめ、事業再構築や体質強化策を矢継ぎ早に打出してきた。中西さんには、そのスピードが買われたというだけあって、仕事に戸惑いはない。「話してみると、気さくで、明るい人」と社内の評判も上々だ。

—これからの経営課題に、まず何がありますか。

 やはり当社としては、出遅れている機能性材料分野をどう強化するかだ。中期経営計画の中でも強調したように、石化・基礎化部門と機能性材料部門の利益が50:50になるようにもっていきたい。石化や基礎化部門は業績も好調で、コストダウンをやったりして、それなりに利益を確保してきたが、機能材料は出遅れた。

 この原因には2つのケースがある。第一は、光学フィルターのPDPフィルムなど、これまでにコストダウンをやってきたのに、それ以上に値段が下がってしまったケース。第二は予想以上に需要が伸びてサプライが間に合わなかったケース。

 全体として言えば、どうもまだ、情報・電子材料分野は顧客のニーズがよくつかみ切れていない。こちらからユーザーに提案するぐらいでないといけないのに、そこまでいっていない。半導体材料のCCDパッケージなども、経験は豊富に積んでいるはずなのに、情報・電子産業そのものがよく見えていなかったと思う。これからスピードをあげてニーズに対応し業績を拡大していくようにしたい。

—新しい体制になって、会社はどこが変わりましたか。

 体制としては石化・基礎化部門と、機能材料部門が「両輪」となるよう、2人の副社長にリードしてもらっている。また「車軸」として研究、生産、人事を担当する専務が3人就いた。全体として、意思決定のスピードを上げる。機能性材料の場合は、事業領域が広く、やりたいことはたくさんあり、できるところからどんどん積極的にやっていく。そういうイメージの経営をやっていきたい。

 ヘルスケア材料分野では、医薬中間体やアグロケミカル、レンズ材料、不織布など世界トップシェアのものも多い。機能性ポリマーズの領域とも重なっているので、相互に連携しながら拡大を図っていくつもりだ。

 目標としては、中計最終年度である07年度には経常利益1,000億円を達成する。機能性材料分野がこのうち50%を占める。07年といえば、三井化学が合併誕生してちょうど10年目にあたる。なんとか実現したい。

—出光興産との業務提携も、さらに新しいものが出てきそうです。

 石油精製と石油化学の連携は、これから経営戦略上ますます重要になる。両社で委員会をつくり、今後、さらにどんな提携ができるか検討しているところだが、可能性のありそうなものはすでに全部テーブルの上に乗せている。

 これまでにも、ポリオレフィン事業でプライムポリマーを設立したのをはじめ、LNR装置によるベンゼンの生産再開、大型輸送船を使っての輸入ナフサの共同配船などをやってきたが、これからも、いい答えは出てきそうだ。大きな基本的な枠組みづくりというより、できるところから順番にどんどんやっていこうという考え方で取り組んでいる。

—中国にはPTAの大型計画がありますが、最近、中国経済は雲行きがあやしくなってきたという声をききます。不安はありませんか。

 PTAは江蘇省張家港に年産60万トンの大型プラントを建設する計画である。石化・基礎化分野の収益や拡大に向けたアジア地域への拡大は、当社にとって基本戦略の一つだし、中国でのPTA計画は最重要プロジェクトといっていい。現在は中国当局の投資認可を待っているところだ。
 
 もちろん海外でやる以上、日本と同じようにいかないことは多い。そのため当社は以前から、いろいろなリスクを考え、海外プロジェクト3原則というものを社内に掲げてきた。1つは、進出する以上はコア事業であること、そして、万一失敗しても本体の経営に影響しない範囲であること、3つ目は、すでに周りにお客をもっていることだ。つまり私たちは、リスクについては、計画にあたり厳しく見てきたことになる。

 今回のPTA計画は、この3原則をクリアしている。ことに3番目のお客についていえば、当社はすでにPTAを中国に輸出している。ポリエステル繊維やペットボトルの原料として現地の需要はさらに伸びるし、それだけの市場ニーズがある。立地条件も非常にいい。

 中国には、すでに当社のプロジェクトがいくつも出ている。コンパウンドは早くからグループ合弁会社を設立し、上海に工場をつくって順調に業績をあげている。PP自動車材の100%子会社もこのほど広東省中山市に工場を完成し営業を開始した。シノペックと合弁でビスフェノールAを事業化する計画も進めている。いずれも、当社が今後グローバル展開を推進していく上で重要な拠点だ。

—社内の雰囲気もこれから変わりますか。

 もっと活気のある、明るい雰囲気の会社にしたい。今までがそうでなかったというわけではないが、積極的に意見を言う雰囲気に欠けていたように思う。これからは、上からの指示待ちではなく、自由な発想で積極的に意見を言い、提案し改善していく。そういう風土の会社になってほしい。