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2007年01月05日 | |
「企業競争力強化へ重点施策」 経済産業省化学課長 山根 啓 | |
【カテゴリー】:行政/団体 【関連企業・団体】:なし |
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平成19年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。 日本経済はバブル崩壊後の深刻な不景気を抜け出し、ゆるやかながらも、外需主導による息の長い着実な回復を果たしております。 化学産業におかれましても、原材料価格の高騰や液晶などIT関連部材の価格低下の影響が見られるものの、全体的には増収増益傾向が続く見通しであり、これも皆様の長年にわたるなみなみならぬ御努力のたまものであるといっても過言ではありません。 しかしながら、我が国化学産業を取り巻く事業環境は、原油価格の高止まり傾向や、中国や中東の大型プラントの建設によるグローバル競争の激化が予想されるほか、温暖化対策、化学物質管理、さらには製品安全対策などの社会的責任の着実な遂行も求められております。このような状況の中、経済産業省としては、本年も以下の諸課題に取り組んでまいります。 第1に、国内立地企業の競争力強化です。 企業が強い国際競争力を維持していくためには、異業種間で大規模な協働体制を敷き、経営の効率化を積極的に推進していくことが重要な方策の1つであり、我が国の石油化学産業においても、異業種である石油精製産業と協力し、最適なコンビナートの生産体制を構築するために原料・燃料の相互利用、重複コスト削減、人材育成等の取り組みが始められております。 昨年は、3月に学識経験者と精製・石化業界の関係者による研究会の報告書をまとめていただくとともに、高度統合に必要な研究開発を行うRING〓が第3期を迎えるなど、非常に重要な年であったといえます。今後とも、このような動きがさらに加速することを期待するとともに、当省としても積極的に支援してまいります。 また、異業種のみならず同業種間でのアライアンス・事業再編も、生産規模拡大・生産性向上を図る上で非常に重要な手段であります。本年度中に企業結合ガイドラインの見通しが行われることになっておりますが、経済産業省といたしましても、企業が国際競争力強化に向けた組織再編を円滑に行えるよう、今後とも公正取引委員会への働きかけを行ってまいります。 企業がグローバル競争を勝ち抜くには、上に述べたような対応に加えて、他社との差別化を図り、高付加価値製品を作り出す必要があります。我が国化学産業は、情報電子材料分野などで他の追随を許さない高い技術力を有し、国際的に見ても高いシェアを占めておりますが、このような高付加価値の分野において、更なるイノベーションを起こし続けることができるよう、当省としては、研究開発予算の重点的配分を引き続き行ってまいります。 また、技術革新やプロダクトサイクルの短縮化が激しいこれらの分野において、企業が新たな製造設備の導入をスムーズに行えるよう、19年度税制改正において償却可能限度額(取得価額の95%)の撤廃や技術進歩が著しいIT分野の法定耐用年数の短縮などを行います。 第2に、海外展開への支援についても非常に重要な施策であると考えております。 企業活動の国際化が猛烈なスピードで進展している現在、当省としましても、特に近年、経済的に相互依存関係の深化が認められる東アジア諸国を中心に、積極的に経済連携協定(EPA)交渉を進めてまいります。 WTOに加盟後、驚異的な成長を遂げている中国についても、我が国は相互発展のためにさらに密接な関係を構築する必要があります。しかしながら、中国との関係においては、我が国化学品に対するアンチダンピング、有毒化学品輸入規制問題や知的財産権侵害等の様々な問題が発生しております。 このような問題を解決し、日中間の相互理解を深めることを目的として、2002年以来日中官民対話を実施しておりますが、昨年開催した第4回対話では、貿易のみならず省エネルギーや地球環境問題等、化学産業を取り巻く幅広い分野について議論が交わされ、双方の理解を高めることができたと理解しております。今後とも、このような対話を通じて日中間の相互理解・相互発展に努めてまいります。 第3に、企業の社会的責任の遂行に対する支援があります。 本年は2008年からの京都議定書第1約束期間を目前に控え、我が国の温室効果ガスの削減目標の達成に向けて、さらには、2013年以降の枠組について、更なる検討が進められることが予想されます。化学産業が、2010年にエネルギー原単位を1990年度比で10%削減するという環境自主行動計画を前倒しで達成するなど、積極的に温室効果ガスの削減に取り組んできたことは高く評価されるべきことと存じますが、今後とも、省エネルギー及び地球温暖化対策の中心的率先的役割を果たしていただくことを期待しております。 化学物質管理も化学産業にとっては大きな課題であります。本年6月には欧州新化学品規制(REACH)が施行される予定でありますが、このREACHへの対応を含め、今後は、最終製品に含まれる化学物質の情報をサプライチェーン上で適切に管理、伝達することが重要な課題となっております。 このため、経済産業省では、昨年5月、「製品含有化学物質情報伝達に係る基本的指針」を策定し、産業界においても、昨年9月に化学物質の情報管理方式を共通化する取り組みを進める「アーティクルマネジメント推進協議会」を発足されましたが、今後とも、官民相まって適切な化学物質管理が行われることを期待しております。 また、昨今、産業事故、製品事故等の社会的関心が高まる中、皆様におかれましては、今一度、自社内の安全体制を御確認いただき、遺漏なき対応をお願いします。特に製品安全に関しては、昨年改正した消費生活用製品安全法の主旨を十分に御理解いただき、万が一、製品事故が発生した場合は、国に対して迅速な御報告をお願いします。 最後になりましたが、本年が皆様にとりまして、一層の御発展、御活躍の年になることを祈念いたしまして、私の年頭の挨拶とさせていただきます。 平成19年元旦 |