2009年04月06日
中国の現況と日系企業の経営課題(2)
5兆元の企業融資枠や公務員の昇給
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

 今回の不況対策として中国政府は4兆元の景気刺激策をはじめ、さまざまな内需拡大、地域振興、雇用維持の政策を打ち出したが、その特徴的な動きについてアジア通信社・中国経済新聞社の徐静波社長は大要以下のように説明する。

 徐社長は過去約10年にわたって、中央政府の招待で全国人民代表会議(全人代)に参加し、取材を続けている。先月初めに行われた同会議では、温家宝首相が今年の8%のGDP成長 の政策メニューを明らかにした。

 同社長は「温首相は追加の景気刺激策(8兆課〜10兆元)も予定しており、<保8>と称する8%成長をぜひ達成するとの決意をみせた」とし、その後の国際会議でもこの考えを説明しているので信頼でできるとみる。
 政府は金融危機に対してまず5兆元(約70兆円)の金融枠を用意した。この半分は不良債権となり、回収の見込みがないといわれる中での対策だ。財源は国債。何としても市場を維持、拡大する考えである。

 経済投資策としての4兆元はまだ3分1程度しか実行していない。しかし、1月からの内需拡大策の一つとして購買力をあげるため、公務員(約1億2,000万人)の給与を10%アップした。約1億人の定年層の年金(退職時の80%)も10%あげている。また、国民医療・年金保証に8,000億元を投入した。民営企業では6年前から年金制度を導入しており、59歳で加入しても、60歳の定年から年金が受け取れる。農民は年金では保障されないが、60歳定年後で年1,000〜1,500元支給される。

 中国ではいま年600万人ほどの大学卒がでる。就職が難しく浪人する大卒者に生活補助を出したり、農業への従事を促したり、職業訓練をするなど雇用対策が講じられている。大卒で起業を希望する人には20万元の資金を貸したり、オフィスを無料で2年間提供するなどの措置(浙江省)もとられている。

 昨年秋の金融危機で失業した農民工の再就職は難問だ。中国の農民工1億3,000万人のうち2,000万〜2,500万人が失業している。農民工の創業に優遇措置を講じ、また、無料で職業訓練を行っている。政府の考えとしては中国の経済成長1%は約100万人を雇用するので、8%の成長で800万人が就業できるとみる。中央政府のさまざまな施策に対し、地方政府も景気振興に力を入れている。

 地方政府は政府担保で企業に融資するケースもみられる。寧波市では造船会社が不況に直面、銀行が船舶担保に金を貸さないため、給与を政府が支払った。広東省でも玩具企業の倒産で、退職金を政府が立て替えるという場面があった。中西部、東北部の振興には中央政府が数年前から支援しているが、鉄道、道路、港湾整備などの公共投資が奏功しはじめ、経済開発が進む場面もみられる。


中国の現況と日系企業の経営課題(1)
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