| 2009年04月09日 |
| 中国の現況と日系企業の経営課題(5) |
| 環境を変える労働契約法 年金、医療 |
| 【カテゴリー】:海外 【関連企業・団体】:なし |
中国では07年末から08年にかけて、外貨の大量流入により通貨の供給量が急増しインフレとなり、バブル経済が発生した。07年のCPI(消費者物価)は年率で6%(通常は1〜2%)も上昇した。対策として年に5回以上の市中貸出金利の上昇や輸出抑制のための増値税(17%)還付率の低減、外資企業優遇政策の見直し(外資締め出し政策への転換)、米国債の大量購入などによる外貨保有増加の抑制などが行われた。 高度経済成長で沿岸部は年率10〜20%以上、賃金が上昇した。最低賃金でも上海は月額14%増の960元、深せんは17.6%増の1,000元となった。深せんなどでは労働者の待遇改善要求が強まる一方、低賃金での労働者確保が難しくなった。 社会不安を未然に解消するため中央政府は産業、経済振興の政策変更に迫られた。労働者重視政策に転換し「労働契約法」を08年6月に実施した。外貨準備高の急増で法人税を内資企業33%、外資企業24%、外資ハイテク企業15%から内外資とも25%に統一。 ただし、内陸部やハイテク産業への投資は1部継続している。また、01年のWTO加盟以降も規制していた小売業、人材派遣業、国内物流などを緩和した。国内市場の開放により内需拡大を図ろうというわけだ。 横浜企業経営支援財団の木村行裕GBA(グローバルビジネスアソシエーツ、元東芝、芝浦メカトロニクス)は「中国の労働者重視政策は重要で、労働契約法を注目、研究する必要がある。4兆円の景気刺激策は内需拡大、農村支援のための国力をあげた政策である」と日本企業側の真剣な対応を促す。 労働契約法は直接雇用、間接雇用にかかわらず労働契約が必要。10年以上の雇用契約には無期限,終身の無固定雇用(法律制定以前の雇用期間も対象)となる。雇用契約を解除した場合は雇用主は経済賠償(1年に1か月分)を支払う。雇用契約の期間は2カ年かそれ以上で、更新は3回まで。 労働訴訟への対応はコンプライアンスの整備にある。社員採用の厳格化と同時に優秀な人材の確保にも留意する必要がある。福利厚生、社会保障の面で労働環境の整備が求められる。労務対策としては給与、昇進、昇格制度など人事制度を明確にすることが重要である。 社内コンプランス制定は日本の本社が国内意識を変えて取り組み、中国の低賃金の払拭、契約社会への理解、社員教育の徹底を図るべきである。中国では会社の低賃金、契約社員、社員の意識がまだなく、より良い条件であれば転職することを選択する。 中国のカントリーリスクでは法令が未整備であること、外貨取引制限(国内取引を元に限定)などの金融システムの未整備、技術提携、ノウハウ、労務費用など料金支払いの難しさなどがある。売掛金回収の困難さも問題。中国は外国であり中国語で取引していることを忘れてはならない。中国人に責任を持たせる工夫、昇給昇格の人事制度である。 中国の現況と日系企業の経営課題(1) http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.php?NCODE=26385 中国の現況と日系企業の経営課題(2) http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.php?NCODE=26402 中国の現況と日系企業の経営課題(3) http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.php?NCODE=26408 中国の現況と日系企業の経営課題(4) http://www.chem-t.com/cgi-bin/passFile.php?NCODE=26420 |