2009年04月10日
中国の現況と日本企業の経営課題(6)
内陸部の所得格差解消へ 農民工が帰村
【カテゴリー】:海外
【関連企業・団体】:なし

 金融危機の影響で昨年末に大量の農民工が故郷に帰った。その数2,000万とも2,500万人ともいわれている。ただ、地方政府は若干の生活手当を出し、技術を身につける職業訓練も行っているという。(前出の徐社長)

 政府が担保会社(信用保証)を作り企業に資金を貸すところもでている。企業が倒産して事業税がとれなくなることを懸念しているようだ。都会の企業に執着するのではなく、帰村する農民工には何らかの職業を身につけたいという意欲が出始めているのかも知れない。

 地方政府にはこれまでの高度成長で財政的な力を持ったところもあって、遼寧省のような公共投資の大幅増はその1例といえる。問題は沿海部と内陸部の所得格差だが、これの解消には時間がかかりそうだ。地方によっては余剰となった大学卒の採用を試みているところがある。また、帰村した農民工が都会での経験を生そうと、地方議員の議員選挙に打って出るという話もあるそうで、新しい時代に向けてさまざまな動きが出始めている。

 中国は今年で建国60年を迎えた。改革開放以来の30年の経済的な変化はGDPで68倍、貿易総額で105倍、外貨保有高で1万倍以上成長した。90年代後半より労働集約型産業から知識集約型産業に転換、北京、天津、上海、蘇州、広州、大連などに第2次加工産業が生まれた。

 最近ではITソフト、半導体、電子機器などの開発と設計にシフト、第3次加工産業が誕生している。しかし、競争による価格下落で労働環境の悪化が進行している。深せんのようにアセンブリー産業が衰退し始めた。とくに日系企業では賃金の高騰、元高、労働契約法による労働者の意識高揚などで苦しい経営が続いている。WTO加盟や05年7月の元の変動相場制への移行後、輸出が拡大、知的財産権問題が叫ばれる一方、物価高騰、インフレ、株価と不動産の高謄などの問題が起きた。

 経済の高度成長のメカニズムとしては高い貯蓄率(06年48%)、不動産、設備投資などの固定資産投資、輸出依存度(約40%、日本は18%)、そして大都市3大地域の高い成長率がある。上海、江蘇、浙江の長江デルタ(人口1億4,000万人)、深せん、珠海、中山、広州などの珠江デルタ(同9,200万人)、北京、天津、山東、河北、遼寧などの環渤海野3地域でこの沿海部が経済成長の源泉。

 沿海部に急成長によってできた内陸部との格差は、07年で中国の一人当たりGDP2,483ドルに対し、上海9,600ドル、北京8,200ドル,天津6,700ドルなど。最貧地区の貴州省は1,000ドル台である。こうした情勢の中、中央政府の外資誘致策はハイテク、サービスを中心に、以前にもどりつつあるようだ。(おわり)


中国の現況と日系企業の経営課題(1)
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中国の現況と日系企業の経営課題(2)
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