2000年12月05日
PBT、高成長を背景に新増設計画相次ぐ~今後競争は激化
三菱化学は単独で四日市に6万トン設備建設へ
【カテゴリー】:原料/樹脂/化成品
【関連企業・団体】:DSM、ウィンテックポリマー、帝人、デュポン、バイエル、ポリプラスチックス、三菱化学

 PBT(ポリブチレンテレフタレート)は、IT関連を中心とした電気・電子分野、および自動車分野の堅実な成長を背景に、グローバル規模で新増設計画が相次いでいる。日本でもこのほど三菱化学が四日市で年産6万トン設備を建設する方針を固め、今後ますます競争は激化していく見通しだ。
 これまでPBTは、電気・電子分野、特にコネクターなどの小さな部品が主力用途であったが、昨年頃からハウジングや機構部品など比較的大型の用途で採用が増えてきており、アジア経済の回復とあいまって、現在需給はタイトな状態が続いている。
 PBTの成長の背景には、技術的なブレイクスルーやABS樹脂などとのアロイグレードの開発、さらには生産コストの削減が進んでいることが挙げられる。このため今後は連続重合による大型設備で低コストの生産を行うことが必須となってきている。
 こうしたことから欧州を中心としたPBTメーカーは、今年に入ってから共同投資による大型設備の建設を計画している。今年5月にはDSMとティコナが欧州での新設を発表、6月には独バイエルも参加を表明したが、その後10月にバイエルは同計画から離脱、原料メーカーでもあるデュポンとの共同で欧州における年産8万トン新設計画を発表した。DSM-ティコナ、バイエル-デュポンとも2003年の完成を予定している。
 これら欧米のPBTメーカーは、単に欧州の需要に対応するためだけではなく、今後も最も成長が期待されるアジア市場を視野に入れていると見られ、日本を含めたアジアのメーカーとの競争が激化する見とおしとなっている。
 これに対し日本のPBTメーカーも新増設を計画しはじめている。来年1月1日からポリプラスチックスのPBT事業と帝人のPBTおよびガラス繊維強化PET(ポリエチレンテレフタレート)事業を統合して営業を開始するウィンテックポリマーは、2002年初頭をめどに年産5万トン設備を建設する方針を打ち出している。さらにこのほど三菱化学が四日市で2002年をめどに6万トン設備を建設する方針を固めた。
 三菱化学の計画は、当初米ジーイープラスチックスとの間で日本を含むアジア地域において共同で新設備を計画するものとして検討されていたが、立地場所などの点で両社の思惑が一致せず、三菱化学単独で四日市に建設することになったもの。ただし、ジーイープラスチックスとは、すでに原料1,4BD(ブタンジオール)事業化でFS(事業化調査)を開始しているシンガポールなどを候補として、今後も検討を継続していく方針。
 これからは、世界のPBTメーカーの競争がさらに激化すると予想されており、共同投資を含めた大型の新増設計画が打ち出される一方で、PETの転用設備などで生産している小規模のメーカーは、PBTからの撤退、あるいは事業統合などについて、今後決断を迫られることになると見られている。