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2000年10月11日 |
住友化学、硫安を副生しないカプロラクタム新プロセスを確立 |
伊エニケムとの共同研究の成果/2003年に新設備建設へ |
【カテゴリー】:新製品/新技術 【関連企業・団体】:住友化学 |
住友化学工業は11日、ナイロン原料であるカプロラクタムの新製造プロセスの技術確立に成功、新プロセスを用いた商業プラントを日本に設置するほか、ワールドワイドでの事業展開の可能性を追求していく、と発表した。新設備は2003年中の早期の完成を予定している。 カプロラクタムは、ベンゼンを出発原料に、シクロヘキサノンを経由してシクロヘキサノンオキシムを液相でベックマン転位して製造する製法が主流となっている。しかし、現在のこの製法は、オキシム製造とベックマン転位の際、多量の硫安を副生、その発生量はカプロラクタム1トンに対し1.6~4.0トンにも達する。このため、触媒の硫酸を製造する設備に加え、副生硫安を製品化する設備が必要となるほか、低落傾向にある硫安の価格がカプロラクタム製造コストを押し上げてしまうという問題があった。 住友化学は、ベックマン転位工程での高性能新触媒の開発に成功、年産5,000トンの実証プラント運転を経て、気相でのベックマン転位プロセスの商業化の目途を得たもの。一方、イタリアの大手石油化学メーカーであるエニケムは、イタリアのポート・マルゲーラ(Porto Marghera)に1万2,000トンの実証プラントを有しているが、独自の触媒(TS-1)を使用して、シクロヘキサノンをアンモニアと過酸化水素で直接オキシム化する新法(アンモキシメーション法)の開発に成功している。 住友化学はこれまで、エニケム社と共同で、これらの2つの新法を組み合わせた新プロセスの有効性を検討してきたが、同プロセスが優れた競争力を持つことを確認、商業化を決定した。2003年中の早期完成を目指し、日本に建設する新設備は、硫安を一切副生しない(副生物は水のみ)世界で初の本格的商業プラントとなり、完成により同社のカプロラクタム生産能力は従来法による年産9万3,000トンとの合計でほぼ倍の規模に拡大する見通し。 カプロラクタムはナイロン6の原料だが、ナイロン6は、繊維あるいは樹脂として、衣料、自動車・電気部品、食品包装用フィルムなど、広範な用途で用いられている。国内需要は、今後、エンジニアリングプラスチック用を中心に樹脂分野の伸びが期待されており、全体的にも安定した推移が見込まれている。一方、高成長を続けているアジア地域では、繊維分野で4%、樹脂分野で7%程度の伸びが期待されている。 住友化学は、従来法設備でカプロラクタムの製造、販売を行ってきたが、今後は、コンパクトで競争力のある新プロセスを武器に、国内外でカプロラクタム事業を積極的に拡大していく方針。 |