2019年12月23日
産総研「太陽電池の出力低下容易に抑制」技術開発
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

産業技術総合研究所(産総研)は、太陽電池の性能が短期間で大幅に低下する電圧誘起劣化(PID)を、太陽電池セル表面を透明導電膜で被覆するだけで十分に抑止できる技術を開発したと発表した。

太陽光発電研究センター(松原浩司センター長)らの研究チームが開発した。

PIDは高電圧印加により太陽電池モジュールの性能が短期間で大幅に低下する現象で、メガワット級の太陽光発電所で発生している。

これまでに、太陽電池モジュールの封止材の抵抗率を高める、太陽電池セルの反射防止膜の組成を変えるなどの対策が報告されているが、PIDの進行が遅れるものの、完全には抑止できず、製造コスト増や初期変換効率低下などの課題もあった。

今回開発した技術は、表面に反射防止膜がある従来型の結晶シリコン太陽電池セルを透明導電膜で被覆することにより、反射防止膜にかかる電界を遮蔽する技術で、PIDを十分に抑止でき、発電量低下のリスクを回避できる特長がある。

初期変換効率をほとんど低下させず、安価・簡便な手法である点も特長である。また、太陽電池セル表面の電極が断線した場合、一般には断線した箇所のキャリアは収集できないが、今回開発したセルでは、断線箇所のキャリアも透明導電膜を介して収集可能で、発電性能が低下しないという副次的効果もある。

さらに、従来用いられてきた安価な太陽電池部材やセル・モジュール製造工程をそのまま用いることができるため、製造コストの上昇を招かず、容易に産業界に技術移転できると期待される。