2020年04月06日
京大、iPS細胞用いてヒト分節時計のメカニズム再現
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学iPS細胞研究所、理化学研究所などの研究グループは、ヒト人工多能性幹細胞(iPS)細胞を段階的に誘導する手法を開発し、脊椎の発生を試験管内(in vitro)で再現するモデルを確立したと発表した。

 研究グループは、このモデルを用いて未分節中胚葉(PSM)から椎骨・肋骨・骨格筋・皮膚などの元となる体節の形成を段階的に再現することに成功した。
 
 分節時計の主要な遺伝子の発現の視覚化により、ヒトの分節時計が5時間周期で振動することを発見し、マウスの分節時計が、実際の胚と同じく2~3時間周期であることを確認した。誘導したPSMを用いたRNAシークエンス解析により、分節時計に関係する約200個の遺伝子を同定した。
 
 さらに、分節時計の主要な遺伝子に変異を持つiPS細胞をゲノム編集により作成し、これをPSMに誘導し、遺伝子変異が分節時計に与える影響を明らかにした。分節時計の遺伝子変異を有する疾患、脊椎肋骨異骨症の患者より樹立したiPS細胞でこの遺伝子変異を修正すると、分節時計の異常が回復することが確認できた。

 このiPS細胞からPSMを経る段階的誘導法は、in vitroでの脊椎発生のプロセスの再現と再構成を可能にする。分節時計をはじめとするヒト脊椎形成の機構の解明やさまざまな脊椎疾患病態の理解につながると期待される。

 同研究成果は、2020年4月2日に、国際学術誌「Nature」のオンライン版に掲載された。


ニュースリリース
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2020/200402_1.html