2020年06月22日
理研、小胞体への非典型なタンパク質輸送、因子同定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所の鈴木匡研究員らは19日、真核生物のモデル生物である出芽酵母で、小胞体シグナルペプチドを持たないタンパク質の小胞体内への輸送を抑制する因子としてSte24タンパク質を同定したと発表した。

同研究成果は、シグナルペプチドに依存しない輸送機構のより詳しい解析につながると期待できる。

可溶性タンパク質の小胞体への輸送は、輸送されるタンパク質自身が持っている小胞体シグナルペプチドによって規定されており、シグナルペプチドを持たないタンパク質は小胞体内へ輸送されないと考えられてきた。
一方で、シグナルペプチドを持たないにもかかわらず、小胞体内へ輸送される可溶性タンパク質が一部報告されてきた。だが、このシグナルペプチドに依存しないタンパク質輸送の詳細は分かっていなかった。

今回、研究グループは、出芽酵母を用いて、シグナルペプチドに依存しない小胞体へのタンパク質輸送の抑制因子としてSte24タンパク質を同定した。また、Ste24タンパク質を欠損した変異株を用いて、シグナルペプチドを持たない核タンパク質Rme1が小胞体へ輸送されることを発見した。

同研究は、科学雑誌「Journal of Biological Chemistry」掲載に先立ち、オンライン版(6月8日付)に掲載された。


<用語の解説>

■Ste24タンパク質 :小胞体に存在する膜貫通タンパク質。出芽酵母接合因子aファクターの成熟化に関わるプロテアーゼ(ペプチド結合の加水分解酵素)。

■小胞体 :真核生物に存在する細胞内小器官の一つ。分泌経路で輸送されるタンパク質は、輸送の第一段階として、細胞質から小胞体内腔へ輸送される。