2020年06月29日
理研、生物個体成分の組成・物性・位置を非破壊計測
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 環境資源科学研究センターの菊地淳チームリーダーらは26日、生物個体中成分の組成・物性・位置情報を非破壊計測する、3次元核磁気共鳴(NMR)パルスシーケンスと可視化プロセッサーを開発したと発表した。

生物だけでなく食品・飼料、化学プロセスなどの物性・位置情報や組成評価にも応用できると期待される。

今回、研究チームは、磁気共鳴画像(MRI)法によって得られる生体固体の肉質部や臓器などの深度方向の位置情報、NMR法によって得られる緩和時間と拡散係数などの物性情報、組成情報を非破壊計測できる新手法を開発した。

この手法を通称「川エビ」として、唐揚げなどで親しまれるスジエビに適用し、頭部から尾部に至る体軸方向に対し、脂質・タンパク質・糖・アミノ酸などの組成分布と「硬さ・柔らかさ」に関する物性プロファイリングを行った。

すると、スジエビ頭部には脂質が多く含まれ、脂質はほとんど拡散していないこと、尾部では脂質は少ないものの、脂質がアミノ酸やアミン類とともに比較的速く拡散していること、また頭部は硬く尾部は柔らかいことなどが分かった。将来的に同手法は、NMR管内で加温・冷却して食材を固めた際の状態変化、さらに部位ごとの食感・呈味評価などに応用展開できると考えられる。

研究の詳細は、オンライン科学雑誌「Communications Chemistry」(6月26日付)に掲載される。


<用語の解説>
◆核磁気共鳴(NMR)
静磁場に置かれた原子核の共鳴を観測し、分子の構造や運動状態などの性質を調べる分光方法。3次元NMRなど多次元NMR法では、間接的に信号を検出してから核スピン間での磁化移動を行い、その後、信号を直接観測する。
NMRはNuclear Magnetic Resonanceの略。