2020年09月07日
NIMS「磁気トムソン効果」直接観測に世界初・成功
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:物質・材料研究機構

 NIMS(物質・材料研究機構)は4日、産総研と共同で、温度差を付けた導電体に電流を流すと生じる吸熱・発熱(トムソン効果)が磁場に依存して変化する現象「磁気トムソン効果」を直接観測することに世界で初めて成功したと発表した。今後、熱エネルギーを制御するための新たな機能・技術の創出や、熱・電気・磁気変換現象に関する物質科学のさらなる発展につながると期待される。

 トムソン効果は、熱電変換技術として広く研究されているゼーベック効果やペルチェ効果と並び、金属や半導体における基本的な熱電効果の1つとして古くから知られている。しかし、ゼーベック効果やペルチェ効果に対する磁場・磁性の影響は長年の研究で明らかにされてきたが、トムソン効果が磁場や磁性にどのように依存するかは、測定・評価の難しさもあり研究が進んでいなかった。

 今回、研究チームは、ロックインサーモグラフィー法と呼ばれる熱計測技術を用いて、導電体に温度差と磁場を与えながら、電流を流した際に生じる吸発熱現象を精密測定した。その結果、導電体に温度差と電流の両方に比例した吸熱・発熱が生じ、それに伴う温度変化が磁場を印加することで増強される振る舞いが観測された。系統的な測定を行うことで、観測された吸熱・発熱信号の磁場依存性が磁気トムソン効果に由来することを実証した。
 
 今回の実験に用いたビスマス・アンチモン(BiSb)合金における磁気トムソン効果は、非常に大きな熱電能を示し、ゼーベック効果やペルチェ効果と同等の出力を示すことが明らかになった。

 同研究成果は、アメリカ東部時間9月2日にアメリカ物理学会誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載された。