2020年09月11日
理研、自閉症を理解・バイオマーカー候補発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 脳神経科学研究センターの前川素子上級研究員、吉川武男チームリーダーらの共同研究グループは、脂肪細胞型脂肪酸結合タンパク質FABP4が自閉スペクトラム症(自閉症)のバイオマーカーになり得る可能性を発見したと発表した。

今後、自閉症の病態理解のためのバイオマーカー開発に向けた取り組みに貢献すると期待できる。

自閉症では詳しい病態を明らかにするために、自閉症の生物学的再分類に役立つバイオマーカーの開発が望まれているが、今のところ、自閉症には臨床診断に役立つバイオマーカーは存在していない。

今回、共同研究グループは、定型発達児と自閉症児の血液サンプルを用いた解析により、低年齢の自閉症児では定型発達児と比較して血中のFABP4濃度が低いことを明らかにした。

また、自閉症のDNA検体を用いた遺伝子配列解析により、機能的変化につながる、まれなFABP4遺伝子の変異を発見した。さらに、Fabp4遺伝子破壊マウスは、自閉症類似の行動および組織学的特徴を示すことを明らかにした。

これらの結果から、FABP4が自閉症バイオマーカーになり得る可能性、FABP4の機能低下が自閉症の病態形成に関与する可能性が示された。

本研究は、科学雑誌「Brain Communications」のオンライン版(日本時間9月11日)に掲載される。


<用語の解説>
◆自閉スペクトラム症 :自閉スペクトラム症(自閉症)は、社会性障害、コミュニケーション障害、こだわり行動などを特徴とする、脳機能障害による発達障害。 近年発症率が増加しており、厚生労働省(平成27年)によると、医療機関に通院または入院している患者(自閉症、アスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害など)の総数は19万5,000人となっている。