2020年12月16日
理研、遺伝子資源を化合物資源へ、安定生産実現
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 天然物生合成研究ユニットの高橋俊二ユニットリーダーらの共同研究グループは15日、放線菌の二次代謝産物である「verticilactam(ヴァーティシラクタム)」の生合成遺伝子群の全てを異種放線菌に導入・発現させ、ヴァーティシラクタムおよびその新規類縁体を生産させることに成功したと発表した。

この研究成果は、生産が不安定な微生物の二次代謝産物をより安定的に生産させるとともに、新しい天然化合物の創出につながると期待できる。

放線菌が生産する二次代謝産物には、医薬品や農薬として開発されているものが多くある。しかし、生産菌の継代に伴い生産量が低下するものや、生産そのものが行われなくなるものもある。そのような二次代謝産物を生産能の高い異種放線菌に生産させる手法は、有用化合物を安定的に供給するために重要となる。

今回、共同研究グループは、ヴァーティシラクタムの生合成遺伝子を同定し、それを異種放線菌に導入することで形質転換株を作出し、ヴァーティシラクタムを生産させることに成功した。

ヴァーティシラクタムの新規類縁体も生産されていることを確認したことから、それらを単離し構造を決定した。また、これまで未決定であったヴァーティシラクタムの絶対立体配置を、計算化学の手法を用いて決定した。さらに、ヴァーティシラクタムに抗マラリア活性があることも示した。

本成果は、米国の科学雑誌「Journal of Natural Products」(11月20日付)に掲載された。


<用語の解説>
◆放線菌とは :土壌中など自然界に広く存在するグラム陽性の真正細菌であり、複雑な構造を持つ二次代謝産物を生産する。人類は、それらの中から、医薬、農薬、動物薬などの生理活性を持つ物質を利用してきた。医薬探索源として重要視されている。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2020/20201215_1/index.html