2021年01月22日
東大・産総研 食塩“結晶”の瞬間を撮影
【カテゴリー】:行政/団体
【関連企業・団体】:産業技術総合研究所

 結晶の技術は歴史が古く、“製塩”は紀元前から行われてきたが、どうやってそれができるのかといった機構の理解はこれまで十分ではなかった。

 東京大学大学院 理学系研究科の中村栄一特別教授(化学専攻)らの研究グループは22日、産業技術総合研究所と共同で、無秩序な分子集合体からナノメートルサイズの食塩結晶ができる瞬間、さらにそれが大きく成長する様子を、スローモーション映像で連続的に記録することに成功したと発表した。

 結晶核が形成される過程を原子分解能透過電子顕微鏡(注)でスローモーション撮影した。

 研究では、塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を水分散性円錐状カーボンナノチューブ(CNT)に内包させ、その後乾燥により水を除去することで、CNT内部に導入されたNaClが真空下で結晶化する様子を撮影した。
 
 原子レベルでの実時間観察は、円錐という異方的な形状がCNT先端におけるNaCl分子の自己集合・核形成を誘起し、さらにCNT内部というナノメートルサイズの制限空間が分子拡散を抑制することで達成された。撮影した動画では、CNTの先端部に1ナノメートル(10億分の1メートル)程度のNaCl結晶核が再現性よく繰り返し形成される様子が捉えられた。

 結晶の形を制御することで望みの性質を持った結晶を手にすることが可能となり、製薬・材料分野へ革新をもたらすことが期待される。

同研究の成果は米国の化学会誌「Journal of the American Chemical Society」に掲載された。

<用語の解説>
▽原子分解能透過電子顕微鏡 :原子1つ1つを区別して観察可能な性能を持つ透過電子顕微鏡。光より波長の短い電子線を用いる顕微鏡で、物質を透過してきた電子線により像を結ぶことによって物質の形状を視覚的に知ることができる。