2021年02月15日
理研、神経細胞の情報伝達メカニズムを発見
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

理化学研究所 脳神経科学研究センターの合田裕紀子チームリーダーらの国際研究チームはこのほど、神経細胞の近隣のシナプス(神経細胞の部位)間で起こるシナプス強度(情報の伝わりやすさ)の変化について、新たなメカニズムを見いだしたと発表した。

記憶をつかさどる脳内シナプス回路の稼働原理の解明とその制御の理解に貢献すると期待できる。

学習シグナルに誘導されるシナプス可塑性(強度変化)は記憶にとって重要であり、記憶の形成の理解には刺激を受けたシナプスの強度変化が鍵とされてきた。一方で、学習シグナルの刺激を受けたシナプスだけでなく、直接刺激されなかった近隣のシナプスも強度変化を起こすことが知られている。しかし、このようなシナプス間での競合の実態は分かっていなかった。

今回、国際共同研究チームは、学習シグナルの刺激を直接受けなかったシナプスの強度は、刺激を受けたシナプスに近いほど弱くなり、逆に少し離れたシナプスでは強くなることを示し、シナプス強度を強くするシグナルと弱くするシグナルが並行して稼働していることを突き止めた。

この知見は、記憶を形成するシナプス強度の変化の最小単位は何かという問いへの理解につながる。

同研究は、科学雑誌「Cell Reports」オンライン版(1月26日号)に掲載された。


<用語の解説>

◆学習シグナル :記憶形成に関わるシナプス強度変化を誘導する高頻度の入力。


ニュースリリース参照
https://www.riken.jp/press/2021/20210212_1/index.html