2021年04月06日
理研など、老化による幹細胞のがん化機構発見
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理化学研究所、関西学院大学、日本医療研究開発機構の共同研究グループは6日、ショウジョウバエを用いて、個体の老化に伴って腸の幹細胞(腸幹細胞)が過剰に増殖し、がん化する分子機構を発見したと発表した。

幹細胞による組織の維持とがん化は、ショウジョウバエと哺乳類のどちらでも観察されることから、同研究成果は、将来ヒトの老化に伴うがん発生機構の解明にも貢献すると期待できる。

老化したショウジョウバエの死因の一つとして腸幹細胞のがん化が知られている。今回、共同研究グループは、老化に伴い腸幹細胞が過剰に増える原因を調べた結果、ショウジョウバエで最初に発見された白色眼変異体であるホワイト(white)に着目した。

共同研究グループは今回、ショウジョウバエの野生型3系統と、遺伝学実験でほぼ野生型と同様に扱われることの多いwhite(ホワイト;白色眼)変異体の2系統について、若齢(羽化後1週)と老齢(同1.5~2カ月)の個体の腸における分裂細胞を数えた。老齢個体で分裂細胞が多く観察されれば、老化に伴い腸幹細胞が過増殖していると
考えられる。

野生型の老齢個体では腸幹細胞でwhite遺伝子の発現が増加する結果、葉酸代謝物が蓄積し、細胞が過増殖することを突き止めた。さらにwhite遺伝子の機能もしくは葉酸代謝物の蓄積を抑えることで、腸幹細胞のがん化を抑制し、個体の寿命が伸びることも発見した。

同研究は、科学雑誌「Nature Metabolism」オンライン版(日本時間4月6日付)に掲載される。