2021年06月07日
理研、「磁石の渦」の中から次世代新物質 開発
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:理化学研究所

 理化学研究所は7日、同研究所の軽部皓介研究員が、磁石の中に次世代のエレクトロニクス素材として期待される小さな渦である「スキルミオン」と「アンチスキルミオン」を「ポケットで持ち運べる」ように改良し、アンチスキルミオンを示す新物質を開発したと発表した。

 磁石の中にスキルミオンが存在することをドイツの研究グループが初めて理論的に予言したのは1989年だった。軽部研究員は2016年、ごく狭い温度と磁場の範囲でしか存在できなかったスキルミオンを、広い範囲の温度で安定して存在できるようにする画期的な生成法を見出した。さらにそれを「ポケットで持ち運べる」ように改良した。

 電子には、電流の元になる電荷と、磁石の元になるスピンという二つの性質がある。現在のICT(情報通信技術)の主役は電荷で、トランジスタをはじめほとんどの情報通信機器は電荷を精緻にコントロールすることで動いている。だが近い将来、磁石の性質をもつスピンがICTの主役に置き換わると期待されている。

「スキルミオン」は、向きのそろった電子スピン(磁石)の中で、一部の電子スピンが渦状に並んだものをいう。一方、アンチスキルミオンとは渦の巻き方が異なる。どちらの渦も非常に多くの電子スピンでできている。電子スピン間の距離は非常に短かく、渦の直径は1メートルの1億分の1程度だ。

 この渦は移動させたり、生成・消滅させたりすることができ、電荷と同じように精緻にコントロールできる。「ごく微弱な電流や電場で動かすことができる。デバイス応用への期待は高い」と理研では報告している。


◆関連ファイル

理研ホームページ ( 2021年1月26日 )
https://www.riken.jp/press/2021/20210126_1/