2021年07月30日
北大と科警研、サリンなどの神経剤 簡単に検知
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:北海道大学

 北海道大学大学院 工学研究院の渡慶次学教授、科学警察研究所の宮口一室長らの研究グループは30日、サリンや難揮発性VXガスなどの新経済を化学テロ現場で簡単に検知できる紙製検査チップを開発したと発表した。

 この検査チップは大きさが2cm×4cmのろ紙。水をはじく性質のインクを印刷した小型・軽量・薄型の分析デバイスで、ろ紙の特定の領域がインクで囲まれており、流路の役割をする。
 
 流路の半ばの試料導入エリアに液体試料を滴下した後、流路末端に展開液を滴下すると液は毛細管現象によって流路に沿って流れる。流路の途中には神経剤を検出する複数の試薬が染み込ませてあり、液がそれぞれの試薬に到達する度に一連の反応が起きて神経剤の有無に応じて発色する。
 
 サリンに代表される神経剤の現場検知ツールは、世界各国で研究が行われているが、そのほとんどは難揮発性(VX等)や構造未知の神経剤を検知できない、神経剤とある種の農薬の区別が困難、複数の試薬を用いる多段階の操作と時間が必要など、適用範囲が限られ取り扱いが難しかった。

 今回研究グループは流路のデザインを工夫することで、煩雑な操作を必要としない、あらゆる神経剤を農薬等と区別して目視で容易に判別できるチップを開発した。鮮明な発色によって安価な紙製検査チップの開発に成功した。
 
 同デバイスは防護服を着用した専門部隊による化学テロ発生現場における使用、VXやノビチョクなどを用いた個人攻撃テロの捜査、搬送患者や救急隊員に付着した神経剤の除染の確認など、高度化しボーダーレス化した現代のテロ対策に新たなツールとなることが期待される。

なお本研究成果は7月29日にACS 「Applied Bio Materials」誌にオンライン公開された。


ニュースリリース参照

https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/210729_pr.pdf