2021年08月06日
奈良先端大、AIで細胞内の特定たんぱく質推定
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:科学技術振興機構

 奈良先端科学技術大学院大学の末次志郎教授(先端科学技術研究科)の研究グループは5日、細胞の画像をもとに特定のたんぱく質が細胞内に局在している様子を調べる方法として、人工知能(深層学習 ディープラーニング)を用い、一方のたんぱく質からもう一方のたんぱく質の局在状況が予測できることを初めて解明したと発表した。目的の2つのたんぱく質間に十分に機能的な相関関係がある場合に有効となる。

 細胞は周囲の環境に合わせて微細な構造を取り、それらの構造には特定のたんぱく質の局在が見られる。
 これまでも細胞画像に機械学習を用いて細胞の構造情報を抽出し、解析する試みがなされてきたが、細胞の状態の分類や、細胞膜・核のラベリングなどにとどまっていた。細胞画像をもとに微細な構造の内部にあるたんぱく質分子の局在を予測した試みは今回が初となる。

 今回の研究で、深層学習の一種であるU-netモデルや、2つのネットワークにより正否を判定する敵対的生成ネットワークGenerative adversarial network(GAN)をべースにしたpix2pixモデルに、たんぱく質の染色画像を学習させたところ、少なくとも機能的に関連のあるたんぱく質同士では、ある1種類のたんぱく質の染色画像から他のたんぱく質の染色画像を生成することができた。これを通して、コンピューターの深層学習によりたんぱく質局在の推定が行えることが示された。

 1つのたんぱく質の局在から他のたんぱく質の局在を予測できるため、今後は細胞画像をもとに複数の他たんぱく質の局在が分かるようになる。また、未知のたんぱく質分子間の相関関係の解明に役立てることもできると考えられる。

 同研究成果は8月5日付のスイス科学誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」オンライン版で公開された。


ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20210805/pdf/20210805.pdf