2021年08月30日
京大、ミディアムエントロピー合金を原子レベル観察
【カテゴリー】:新製品/新技術
【関連企業・団体】:京都大学

 京都大学大学院工学研究院の辻伸泰教授らのグループは30日、東北大学と共同で、CoCrNiミディアムエントロピー合金中に形成された局所規則構造の原子レベルでの直接観察に初めて成功したと発表した。

 ハイ・ミディアムエントロピー合金 (HEA/MEA)は、複数の合金元素をほぼ等原子量で混ぜた新しい高濃度多元系合金。中でもCoCrNi MEAは、従来の金属に比べて非常に高い強度を示すことで知られている。
 
 近年の研究から同合金では、(1)合金元素の原子サイズ差に起因した格子ひずみと(2)合金中に形成した局所規則構造(LCO)によって金属の塑性変形を担う格子欠陥、転位(dislocation)の運動が妨げられ、高い強度を示すと考えられてきた。
 
 しかし、合金中のLCOの存在を直接証明することは技術的に非常に難しく、(1)と(2)のどちらが支配的な強化メカニズムであるかは、世界の金属材料学者たちの間でも大きな論争となっていた。

 今回、三次元アトムプローブトモグラフィー法によりCoCrNi MEA中に形成したLCOを原子レベルで直接観察することに世界で初めて成功した。LCOが形成されてもCoCrNi MEAの力学特性がほとんど変化しないことから、同合金では(1)が支配的な強化メカニズムであることがわかった。
 
 これらの成果は、高濃度多元系合金の特徴的な強化メカニズムを明らかにし、優れた特性を有する新しい合金の設計にも重要な知見を与えると考えられる。

 同研究成果は、8月27日に、国際学術誌「Physical Review Materials」に掲載された。


ニュースリリース参照

https://www.kyoto-u.ac.jp/sites/default/files/2021-08/20210827-yoshida-6cafb1e52ddd033bdcda6db1ff39ebe8.pdf