2021年10月27日
東京海洋大など「南極氷河」の調査結果
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【関連企業・団体】:北海道大学

 東南極で最大級の規模をもつトッテン氷河の周辺域では、近年、氷床質量の減少が報告され、また、将来の大規模な氷床流出も懸念されている。国立極地研究所、東京海洋大学、水産研究・教育機構などの共同研究グループは26日、水産庁漁業調査船「開洋丸」および南極観測船「しらせ」で得た現場観測データと衛星観測データを統合的に解析し、トッテン氷河の沖合に定在する巨大な海洋渦が、比較的温度の高い海水を効率的に南極大陸方向へと輸送していることをつかんだと発表した。
 
 氷河末端に流れ込む暖かい海水は、氷床を下から融解することで氷床流出の引き金となるため、同観測成果は、氷床の質量損失が加速するトッテン氷河域での質量損失プロセスの包括的理解につながると期待される。

 南極大陸を覆う氷床は大陸沿岸に向かってゆっくりと流れ、やがて氷山となって海に流出する。氷床末端域には、氷床から海に突き出した「棚氷(たなごおり)」という部分があり、この棚氷には、氷床・氷河の流動を抑制するという重要な役割がある。

 今回の成果は、氷床の質量損失が加速するトッテン氷河域における質量損失プロセスの包括的な理解につながると期待される。だが、定在渦によって大陸棚上へ輸送された暖かい水は、その後どのように大陸棚上を循環して最終的にトッテン氷河の前面まで運ばれるのかなどはまだ不明だ。これらの融解プロセスを包括的に理解するためには、海中に係留系を設置しての長期間の時系列観測などが必要だ。
 
 
ニュースリリース参照
https://www.hokudai.ac.jp/news/pdf/211026_pr2.pdf