2021年11月17日
東大、細胞外で複製し進化する人工ゲノムDNAを開発
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 東京大学 大学院総合文化研究科の市橋 伯一 教授らは17日、核酸やたんぱく質など無生物材料のみを用いて、生物の特徴であるDNAからの遺伝子発現と持続的な複製による進化を細胞外で行うことに世界で初めて成功したと発表した。JST 戦略的創造研究推進事業の一環。

 増えることと進化することは生物の大きな特徴だが、この特徴を持つ人工物はいまだに作られていなかった。研究グループは、DNA複製に必要な2つの遺伝子を持つ環状DNA(人工ゲノムDNA)と無細胞転写翻訳系を用いることで、遺伝子がたんぱく質へと翻訳され、その翻訳されたたんぱく質によって元の環状DNAを複製させることに成功しました。さらにこのDNA複製サイクルを約60日間続けることで、複製効率が約10倍上昇したDNAに進化させることに成功した。

 今回開発した人工ゲノムDNAに転写翻訳に必要な遺伝子を追加していけば、将来的にはアミノ酸や塩基などの低分子化合物を与えるだけで自律的に増殖する人工細胞へと発展させることができる。そのような人工細胞ができれば、現在行われている医薬品開発や食料生産のような生物を使った有用物質生産がより安定で制御しやすいものになると期待できる。

本研究成果は、11月16日に米国科学誌「ACS Synthetic Biology」のオンライン版で公開された。


<用語の解説>
◆無細胞転写翻訳系 :細胞外でDNAにコードされた遺伝子からRNAを転写し、たんぱく質へ翻訳することに必要なすべての因子を含む反応液のこと。

ニュースリリース参照
https://www.jst.go.jp/pr/announce/20211116/pdf/20211116.pdf