2021年11月22日
阪大など、DNA複製へのスイッチ/カギを解明・世界初
【カテゴリー】:ファインケミカル
【関連企業・団体】:大阪大学

 大阪大学と九州大学の研究グループは19日、G1期の複製開始複合体MCM複合体の形成がヒストン修飾の変化によって制御されることを世界で初めて解明したと発表した。

 細胞が増殖するためにはDNAが複製される必要がある。DNAを複製する時期は、S期、その前の準備の期間は、G1期と呼ばれる。G1期は、細胞増殖のために複製期に進行するか、そのまま細胞周期の進行を停止するかを決める重要な時期となる。
 
 MCM複合体はDNA複製を行う際にDNAのねじれを解く役割があり、S期の開始までにはクロマチン上でMCM複合体の六量体単体(シングル)から六量体が2つ連結した状態(ダブル)に遷移することが知られていた。
 
 だが、G1期の長い(?数十時間)ヒト細胞において、どのような過程を経てダブル六量体が形成されるのかは不明だった。今回、ヒト細胞ではG1期に進行したばかりの初期には、MCMはシングル六量体の状態にあり、S期が始まる3~4時間前(G1期後期)になって初めてダブル六量体を形成することが分かった。
 
 細胞周期の長い細胞では、MCMはシングル六量体の状態で留まることから、MCMの状態変化はDNA複製への進行過程を反映するものであり、細胞増殖の理解につながる重要な発見といえる。 同研究成果は11月19日、イギリス科学誌「Nucleic Acids Research」に公開された。

<用語の解説>
◆複製開始複合体
 複製開始起点に結合する4種類のタンパク質からなる複合体。この形成によって、DNA複製が開始される。

◆ MCM(ミニクロモソーム・メンテナンス)
 minichromosome maintenance。複製開始複合体の一因子。6つの構成タンパク質から成るリング状のヘキサマーで、DNA ヘリケースとして働く。

ニュースリリース参照
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/46017/21_11_19_01.pdf